金原ひとみ、「蛇にピアス」以来読んでなかった。
なんだか大げさだし、えぐいしで、小説を読んで安らぎたい私にはきつい感じがするので。
でも、彼女が母親になって、その体験から書かれた小説だと知り、今度は逆に読んでみたくなった。
あの、アウトローな感じの彼女が、子育てでどんなことを感じたのか。
読んでみると、やっぱりえぐさは健在で、でもやっぱり、子供を育てるということがどんな大変なことなのか、という筋書きに共感してしまった。
この小説に登場する母親の何人かは、華やかな職業に就き、旦那様との関わり方もそれぞれ。
旦那が子育てに対してどこか他人事ってところは、世間の母親たちが「うちもおんなじ!!」と思うところかも。
なんと言っても、旦那は子供を産んでないし、一日じゅう子供と付き合うことを当たり前のように押し付けられたりしない。
母親は、それぞれ涙ぐましい努力でもって、子供という嵐から、自分という尊厳を守ろうとする。
もちろん子供が最愛の存在なんだけど、だからこそ、共存を願う。
でも、子供は世間が思っているような(あるいはかつて自分が思っていたような)、砂糖菓子のようなものではないことに、産んでから気づいていく。
涙ぐましい努力の中には、保育園に子供を入れること、仕事に打ち込むことのほか、ドラッグ、虐待、浮気などが含まれる。
その中でも、もっとも印象的だったのは、虐待。
ここまで虐待する側の心に沿って、リアルに描写した小説、私は初めて読んだ。震え上がった。
いつも思うけど、虐待する母親だけが悪いのではない。
「実の母親なのに、こんなことができるなんて信じられない」と簡単に言ってしまうのは(そう言いたい気持ちはとてもよくわかるけど)、世の中の虐待を減らすことには繋がらない。
こういう小説が、少しでも、立場の弱い母親というものを救えたらいいと思う。
哀しいラストまでを読んだら、子供にものすごく優しく接するようになった。
ま、短い時間だったけど…(笑)
読んで満足です。
- 感想投稿日 : 2012年5月16日
- 読了日 : 2012年5月
- 本棚登録日 : 2012年5月16日
みんなの感想をみる