ユウキ: 世界で8番目のたたかいに勝った男の物語 (シリーズ・未来へのつばさ 4)

著者 :
  • ポプラ社 (2005年12月1日発売)
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『ユウキ―世界で8番目のたたかいに勝った男の物語』
 岸川 悦子 (著)


ユウキ。
彼の名前は、三田雄基。
私の中学時代の同級生でもある、彼の「本当の話」。
彼とは、中学こそ同じではあったが、同じクラスには
なったことがなかったので、それほど話をしたことがない。
でも、田舎の小さな中学なので、もちろん彼のことは知っている。

中学卒業後、彼の名前を聞いたのは、
4年前、彼の告別式の知らせがきたときだった。

彼のことが本になったと中学時代の仲間の掲示板から知り、
この本を取り寄せた。


雄基は、この世に名前のない病気にかかった。
名前がないのは、この世で前例がたった7例しかなかったからだ。
そして、雄基が、この8番目の患者になる。

今の現代医療でも、どんなに優秀な医者が集まっても、
治す方法が見つからない。
そういった病気と闘うこと・・・
誰にできるだろうか。

しかし、雄基には、できた。
雄基は、その病気に見事に「勝つ」のだ。

誰もが驚くくらい、最後の最後まで元気でいて。
病気を克服することを信じていて。

本当に、本当に、恐ろしい病気なのに・・・。
私自身も、「元気な」重病人のエピソードに
全く信じられない思いだ。

話の途中には、私の恩師も登場する。
雄基を励まし続けた、その1人として。

その恩師と一昨年会ったときにも、雄基の話は聞いた。
遠い目をしながら、雄基の姿をまぶしそうに思い出していた。

その信じられないほどの元気さ、明るさは、
雄基の友だちから与えられていたものでもあった。
一方で雄基自身が、それ以上に友だちにも与え続けていたのだ。

友だち、先生たち、家族、愛犬・・・
その中心で、雄基が明るく笑い続けていた姿が、
私の心に、強烈な印象を残した。

雄基が、病気に対して抱いていた本心は、私にはわからない。
「きっと雄基は、不安だっただろう、怖かっただろう」
みんなそう思うかもしれない。

でも、私はそう思わない。
雄基は、心の底から病気に勝つことを信じて疑っていなかった気がする。
それくらい、「本当に」強い人間だと感じた。

これほどの大きな、抱えきれない不安・苦しみに、勝った人間。
それは、雄基以外に、私は出会ったことがない。

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感想投稿日 : 2006年4月22日
本棚登録日 : 2006年4月22日

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