百年文庫、4冊目は「涯」。
曰く、「人生の最果てに見たドラマ」。成程。
ギャスケル「異父兄弟」
誰からも好かれる秀才な弟に対し、今は亡き母の連れ子である兄は何をやらせても鈍臭い。
父をはじめ周囲から冷たく当たられる兄を、弟も一緒になって馬鹿にしていた。
ある日、父の使いに出た弟は、帰りに雪の中で道に迷ってしまい…
パヴェーゼ「流刑地」
イタリアの南の果ての寒村。仕事の奇妙な行きがかりから、男はこの地に飛ばされてきた。
半ば処罰のように、半ばこの体験を味わうように、男は村での人々の生活を観察する。
荒涼とした風景のなか、女たちに見捨てられた男たちの孤独を描く。
中山義秀「碑」
幕末維新の動乱期に母の手一つで育てられた3人の兄弟。
みな武芸の誉れ高く、武士としての揺るがぬ信念を持ちながらも、3人はそれぞれの異なる道を歩む。
「異父兄弟」は、後書きにもあるように自己犠牲のおはなし。がむしゃらに弟を救おうとする兄の心が温か。
「流刑地」は薄汚い海辺の村の描写がいい感じ。主人公はあくまで観察者で、一時の滞在者。そんな彼から
見た村の生活、女に人生を文字通り狂わされた男たちを、淡々を描いていく。
今回のは「碑」が一番印象に残ったかな…。
維新期に生きた3兄弟の大河小説的な短編。最後に兄弟の一人の名が刻まれた碑が建てられる、
それまでの人生をずっと追っていくのだけど、兄弟の対比的な人生が面白くてもりもりと読めた。
今回借りてきた分は皆読み終わったので、次は「群」を借りてみたいな…
- 感想投稿日 : 2011年2月5日
- 読了日 : 2011年2月5日
- 本棚登録日 : 2011年2月5日
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