2015年、始まりの一冊。
新年という時だからか、昨年もこの辺りで『平家物語』に触れた気がする。
様々な人からの交信がある時節、だからこそ自分が今立っている場所を振り返りたくなったり、ふと流れに立ち止まることがあるのだった。
後白河院を見つめるは四人。平信範、建春門院中納言、吉田経房、九条兼実。章ごとに変化する語り手と視点が面白い構成になっている。
が、四人に共通して食えぬ施政者、後白河院の存在が非常に大きく、そして不敵過ぎる。
保元、平治の乱から平家の隆盛と義仲、義経の行く末までを見つめてきた後白河院の胸中とは如何なるものか。
騒然とした世の中で、ただ生きたことそのものの凄味を感じる。
また、兼実の章で、兼実が「ふと日夜日録の筆を執っている己が所行に言い知れぬ虚しさを覚えたのであった」と語る。
その、ふとした虚しさに共感を覚えた。
なんのために、だれのために。立ち止まり、歩めなくなるような刹那。
一つの時代に想いを馳せるには、とても良い一冊だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
2015年
- 感想投稿日 : 2015年1月4日
- 読了日 : 2015年1月4日
- 本棚登録日 : 2015年1月4日
みんなの感想をみる