竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集03)

  • 河出書房新社 (2016年1月11日発売)
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感想 : 48
5

森見登美彦訳『竹取物語』
川上弘美訳『伊勢物語』
中島京子訳『堤中納言物語』
堀江敏幸訳『土左日記』
江國香織訳『更級日記』

こんな、宝石の詰め合わせがあって良いのか⁈
発刊を待ちわびていたし、読むのもドキドキ。
それぞれに訳者の持ち味があって、とにかくすごい。

きちんと全文収録されているのも、嬉しい。

中でも、川上弘美の『伊勢物語』は鳥肌モノ。
歌物語の真骨頂というか、とにかく、和歌の訳し方が素敵すぎる。
言葉の数を少なくしながらも、今の感覚を添えてくれて、色っぽいし切なくなりました。

お気に入りは二段。


起きもせず寝もせで夜を明かしては春のものとてながめ暮らしつ


起きるでもなく
ねむるでもなく
夜は明けてゆく
春の長雨がふっている
わたくしはただ見ている


そして三十段。


逢ふことは玉の緒ばかり思ほえてつらき心の長く見ゆらむ


逢うのは
一瞬
恨みは
永遠


更に月報の小川洋子が、この川上弘美訳を上手く伝えてくれているので必見。
そうそう!ですよね!ってなりました。

あとは堀江敏幸の『土左日記』も、すごく考えられていて、参考文献を見ても納得のラインナップで、仕事の仕方に尊敬を覚える。
江國香織の『更級日記』は、とにかく可愛い。そうして、姉や父の描写を通した家族としての作者がよく描かれていて楽しかった。

紀貫之ではないけれど、言葉について、とても考えさせられる一冊だった。
私たちは、その息吹に今尚こんなに鮮やかに触れられる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2016年
感想投稿日 : 2016年1月24日
読了日 : 2016年1月24日
本棚登録日 : 2016年1月24日

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