よなかの散歩 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2014年2月28日発売)
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本棚登録 : 536
感想 : 36

大学時代、あんなに躍起になって、小説や映画や美術を鑑賞したのはなぜだろう。僕は、記憶力に大きな問題を抱えていて、必死になって鑑賞したあの頃の作品の内容(タイトルや監督の名前ぐらいは覚えているが)をほとんど覚えていないのである。だから、何のために? と聞かれてしまうと、まったく答えに窮してしまう。
このエッセイの「優雅とは何か」を読んで、角田さんも同じような大学生活を送っていたことを知った。角田さんは、「無自覚な無知」のままでいる自分が嫌で、必死で映画や音楽や小説を読んだ。何が好きか、何が嫌いか、分からない自分が嫌だと。作品の内容は、今、大半は忘れてしまったようだが、その頃、触れたあまたの作品が、私の好き・嫌いの根っこを支えているとしている。

そうなのだ! 私も大半は忘れてしまっているが、その私を形作っている好き・嫌いの根っ子は、あの頃必死に鑑賞した作品群によって立っている、そのことにわたしはようやく気づくことができた気がする。このエッセイで大切な箴言を角田さんに手渡してもらった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 随筆・エッセイ・紀行文
感想投稿日 : 2014年3月10日
読了日 : 2014年3月10日
本棚登録日 : 2014年3月9日

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