快挙 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2015年10月28日発売)
3.37
  • (12)
  • (47)
  • (78)
  • (11)
  • (2)
本棚登録 : 499
感想 : 55

男性の視点から妻の事を描かれている夫婦の物語。
夫は写真家を目指すが腕を振るわず、
昔からなりたかった小説家に転向しても
これもぱっとしない仕事ぶり。
仕事運がついていないのにも関わらず、
そんな夫の事を責めることもなく妻の方が割り切って
小料理屋の仕事をそつなくこなしていたので、
頼り甲斐があり理解のある妻だと感心してしまいました。
けれど夫が病になり長い闘病生活をすることになり、
周りの環境が徐々に変化することにより夫婦間にも微妙にずれかかり、
そんな折に夫婦で訪ねた寺院での石碑に刻まれていた
「夫婦とはなんと佳いもの 向い風」
これが後の妻の病と向き合うことのきっかけになり
その後の夫の人生、夫婦としての歩みを考える上でも
重要になっていると思いました。
いつも意気揚々としていた妻が深刻な病になってしまった時には、
これでは快挙というタイトルのストーリーには
ならないかもと想像してしまいましたが、
この二人の人生と自分の今までの人生ともどこか重ね合わせたりしていたので、
最終的には妻と笑顔で終えることが出来てほっと胸を
撫でおろすことができました。
夫婦は日頃の事も大切ですが、まさにこの夫婦と同じように
逆風になった時にこそ二人の強さが出て、
立ち向かっていけるという勇気のある意味だなと思いました。
究極になった時こそ真価が問われるというのはこうゆうことかと思います。

この本のタイトルにもあるように、
夫の作品にもある人生での快挙の場面にも考えさせられました。
自分にとって人生で快挙とは何だろうと。
これには自問自答している途中でこの先もずっとしていそうな気がしました。

数々の夫婦の在り方、結婚についての本を読んできましたが、
読んだ後にほっと出来て、心の中でのもやもや感が
すっと取れたような感覚になった作品は初めてかもしれないです。
描写が細かくて読みやすく深く感銘した作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年5月24日
読了日 : 2016年5月24日
本棚登録日 : 2016年5月24日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする