デザインの教科書 (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2011年9月16日発売)
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アイデンティティーとしての室内
室内=インテリア=内面・精神を意味する→室内は生活者の精神を反映している。

現代の私たち
デザインにこだわるほどの豊かさの中にいる

デザインの視点1「心地よさ」
視線=チャールズ・レニー・マッキントッシュ「ウィロー・ティールーム」のハイバック・チェア
使う立場から考える

デザインの視点2「環境そして道具や装置を手なずける」
対象物の持つ「潜在的有用性」がアフォーダンス
それに対して人間側からの人工的働きかけを「表象行為」=デザイン

デザインの視点3「趣味と美意識」
人間の装飾を成立させているのは秩序の感覚
装飾的であることを「アジアニズム」→アール・デコはこっち
非装飾的であること「アッティシズム=ギリシャ的」→バウハウスもこちら(新古典主義的)
どちらも装飾的秩序の意識と言える。
等差的よりも等比的に並ぶ流れの方が均一差を感じる
単位寸法or寸法体系=モデュール
近代において速度は圧倒的な価値。流線型のデザインとして現れる。=バイオミミクリー的な。
バーリントン・ゼファー

デザインの視点4「地域・社会」
地域性を排除したインターナショナルなスタイルをデザインしようとした。
デザインの社会性。職業や階級を差別化するためにデザインが使われてきた歴史がある。
社会的なシステムを可視化するための記号として使われてきた。


近代(20世紀)のデザイン
1.経済的計画、大量消費を前提にしたデザイン
2.デザインによる新しい生活様式の提案
3.ユニヴァーサルな、インターナショナルなデザインを生み出そうとした
4.消費への欲望を喚起するデザイン

1.
経済的なエンジニアリングはあらゆるものづくりに反映
ウイリアム・レヴィットのレヴィット・タウン
一つの消費が次の消費の要因となるような過剰消費社会の時代→1950年代の「ポピュラックス」トーマス・ハイン
2.
生活様式に関わるデザインの制度を破ることは社会の制度を揺るがすことに
→ヨーロッパではフランス革命以後、日本では明治維新以後に解法
→デザインは社会的制度から市場経済のシステムに委ねられた
規制されていた様式に変わる新しい生活様式の提案がモダンデザインに委ねられる(19C ウイリアム・モリス、バウハウス、バックミンスター・フラー「ダイマクション」)(アメリカ第一世代 レイモンド・ローウィー、第二世代 チャールズ・イームズ)
レイモンド・ローウィ「口紅から機関車まで」
→白い冷蔵庫をデザイン。以後「清潔の美学が過程の風景の規範となる」
モダン・デコ
3.
ミースの「ユニヴァーサル・スペース」横にも縦にも箱状のスペースが連続していく
モダン・デザインは地域性や民族性や宗教などのヴァナキュラーな条件に原理を求めるのでなく、機能や構造などの人工的な概念によって普遍的なデザインを実現しようとした。
→屋根を切り取ってしまい箱状にすることで、地域性を持たない抽象的なデザイン(インターナショナル・デザイン)にすることができる
グラフィック・デザインでも言える
ハーバート・バイヤー「ユニヴァーサル・タイプ」バウハウス 1925年
地域性を超えた普遍的なタイポグラフィ。
4.
消費社会の拡大
購入する欲望>使用のための有効性
いかに交換を活性化させるかが課題→デザインはマーケティングと分ち難く結びつく
スクラップ・アンド・ビルドのデザイン

課題
市場は活性化させるが廃棄物は増大する
世界的に見れば90%の人が貧困に苦しんでいる
過剰消費を目指す市場原理によらないデザインを実現する=オルタナティブなデザイン
MITメディア・ラボ ニコラス・ネグロポンティ「100ドル・ラップトップ」


デザインの視点1「心地よさ」について
豊かさの提案。豊かさ=メンタルな豊かさ ×経済的な豊かさ
「心地原則」住居を作る作業など。=技術的・経済的な条件の中でできるだけ心地の良いものを作ろうとすること。
→趣味や美意識と関わっている
→秩序と関わっている「装飾」は秩序の一種
寿命をまっとうするためのデザインの方が心地よい
ボードリヤール「かつて、ものよりも人間の方が短命だったが、現代社会においては、ものが人間より短命になった」

ものの扱い方もデザイン的な行為
意識や感覚と切り離せない存在=ものは人々の分身
→大量生産・大量消費の現代において「形見」(=分身)となるものはあるのか?特に若者において

受けてにおける心地よさに関わるものの選択や使い方=受け手のデザイン
本棚の本を取るために椅子の上に乗る。座るための道具が踏み台として機能する。ペトロスキは、すでにデザインだと指摘している。生活者自らが生活の中で生み出すデザインといえる。
囚人の発明品
http://wired.jp/wv/archives/2003/09/11/%E5%88%91%E5%8B%99%E6%89%80%E7%94%9F%E6%B4%BB%E3%81%A7%E7%94%9F%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%80%8C%E7%99%BA%E6%98%8E%E5%93%81%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%95%B0%E3%80%85%E3%82%92%E7%BE%8E%E8%A1%93%E9%A4%A8/

オキーフの家
カバノン=モデュロール、人体を基準とした寸法システムによって決定

集めてきたものには記憶の断片がある。所有している人の換喩メトニミー
高齢になって、身の回りのものをすべて廃棄すると、なぜか認知症が発症することが少なくない。ものに関わる記憶を廃棄することによって起きるのかも。


シリアスな生活環境のためのデザイン
都市の絶望的環境を改善するための計画=デザイン
→エベネザー・ハワード「田園都市計画」
→同潤会(日本住宅公団)

先進国の95%のデザイナーが10%の豊かな顧客のためにデザインしている。
残りの90%の人々に手を差し伸べるデザインがデザインにおける革命
世界の人口の半分が一日2ドル以下で暮らしている

「マッド・ハウザー・ハット」アトランタ 1986
水・電気のない小屋 それらは公園などの公共施設を利用する
「カトリーナ・家具プロジェクト」ニューオリンズ 2005
廃材を利用するプロジェクト
→産業廃棄物の30%が住宅廃材である日本の現状。参考にすべきである。

マーケティングではないデザインがここでは共通してあげられる。
消費社会のデザインとは異なる、オルタナティブなデザイン

生きのびるためのデザイン
限られた条件の中で、しかしどれほど快適さを実現するか(簡易ベッド ルイ・ヴィトン)
ストックホルムの地下鉄通路=核シェルター 有機的な壁面さまざまな色彩
自立する、サヴァイブするためのカタログ
=Whole Earth Catalog, The New Women's Survival Sourcebook

バックミンスター・フラー「ダイマクション・ハウス」移動型最小限住宅 1943
プライバシーと清潔さ。住宅も土地の所有を必要としない。

坂茂「紙のシェルター」,津村耕佑「ファイナル・ホーム」

極限状態の中でのユーモア
サラエボ戦争時にFAMAというグループが「サラエボ観光マップ」を作った
独房の中のデザイン
ブリコラージュ
近代のエンジニアはコンセプトから入る
ブリコロールは、有り合わせの手に入る材料を利用し、その可能性を考え、組み合わせ、必要なものを作る
有り合わせのものが持っている「潜在的有用性」を引き出す
本来、ものや環境は潜在的有用性あるいは潜在的可能性をわたしたちにアフォードしている
近代的なデザインはいっさいが概念に基づいた計画をたてることから始まる
ブリコラージュは、有り合わせの装置を組み合わせて自分達のパソコンを作ったアップルのカウンター・カルチャー的製法と共通している。


環境問題への処方
三つのエコロジー=エコゾフィー
環境、精神、社会
上記三つに対する行動の再適性を求める
→これまで、技術、経済的コスト、市場の再適性が常に考えられていた

動物の形態につくられた輪ゴム「アニマル・ラバー・バンド」
→ほんのわずかでも使い捨てにしたくないという気持ちにさせるデザイン
パタゴニア「フットプリント・クロニクル」
→製品の良い点はもちろん、ネガティブな情報も開示することで問題の所在を考える動機を作る
ボルボ、リサイクルを促進するための新たなデザインが処方されている

木質ガードレール=
→ぶかっても景観に溶け込むデザイン


デザインを決める具体的な要素
1.色彩
2.素材
3.ものと人間との関係性

1.
色彩の対比現象「紙は白いが、雪と比較すると灰色に見える」→知覚上の色彩
色彩も社会や文化の問題に関わってくる「形容詞的」→文化的現象としての色彩
形容詞と結びついた色彩は社会性をもっており、わたしたちの記憶と関わっている
2.
現代のデザインを支配する重要な要素
安定した強度のあるものの実現(コンクリート)に近代建築のデザインは大きく依拠した
プロダクトもまた、合板、アルミニウム、プラスティックなどの素材を得たことで自在なデザインを実現した
合成樹脂=セルロイド、ベークライト 合板(プライウッド)
チャールズ・イームズ、アルネ・ヤコブセン、柳宗理の椅子
次世代のプラスチックとして、ナイロン、サラン
コーディング材としてのダイアモンド・ハード(DLC)
プラスチックは人工器官に多用されている。→私たちの器官がプラスチックに置き換わる?
宇宙服は人間の機能を拡張してる
3.
協応構造=道具、装置、他者との関係の中で生きて行くことができることを実感すること ×支配、被支配
『悲しき熱帯』家屋の配置を変えることによって意識も変更させた
持ち込み方式の戦争。現地調達をしなかった。アメリカのデザイン戦略
ものによる行動や行為の変化 行為や生活を規定し、変化させる
19cの自転車=女性が遠くまで足を運べるようになった。開放的な生活体験
20cの自動車=国道沿いにホットドッグ・スタンドやダイナーなどの商業施設ができた
16cのフランス=黒鉛を発明し鉛筆を作った。情報管理や教育の効率がアップ!

15cのグーテンベルクの活版印刷
→聖書の普及が教会の権威を揺るがすことに
→印刷は画一的な国民生活や、中央集権主義的政府を生み出したが、同時に個人主義や反政府的態度も生み出した

電気洗濯機が1950年代に出現→固形洗剤が使えないため液体や粉末状の洗剤が多く出回る→洗濯機で洗濯可能な衣服が出回る
→新しいプロダクトの出現に付随して新たな商品が生まれる。


デザインの視点3「趣味と美意識」
テイスト>ホビー
ボイラー・ハウス『趣味』
ステファン・ベイリイ「趣味はデザインについて判断するプロセスの一つ」
デイビッド・ヒューム「あらゆる美、あらゆる不格好なものに対する識別能力」
ジョシュア・レイノルズ「才能と趣味は近しく同様」
カント「快適に関する趣味は感覚的趣味。(センス)美に関する趣味判断は反省的趣味。(リフレクション)<判断>美学的>実践的。主観的普遍妥当性。」

19c後半 モダン・デザインの祖 ウイリアム・モリス
生活をデザインし、ライフスタイルを提案する
生活と芸術の一体化=生活の隅々にいたるまで自らの趣味によってつくりあげていく

民藝 柳宗悦 「受け手の美意識」「使う側の視点」
用の美を主張して、新しい表現を模索(機能性の追求を目指す?=機能主義)したのに対し、日常生活の生み出す道具(用)から美を再発見するという逆の方法を取る。装飾などの恣意性が無く、必要から作られて結果美しいこと。
浜田庄司 イギリスの田園風の家具→池田三四郎 松本民芸家具 洋家具の中で最も統一されたスタイル
→バーナード・リーチの影響

富本憲吉 陶芸家
ウイリアム・モリスの影響
「うつし」によるオリジナリティの欠如の意識から人々の鑑賞を目的としたデザインへ


デザイン・ミュージアム
世界で最初のデザイン・ミュージアムはロンドンにあるヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム
前身は1852年に開館した産業博物館
鑑賞するための展示と「閲覧」するための展示がある→百科全書的な知の展示

その後、オーストリア美術工芸博物館を始めとしたデザイン・ミュージアムが作られる

MoMA 1929 アルフレッド・バー フィリップ・ジョンソン

ブルックリン美術館 1880
『アメリカの機械時代1918-1941』展
デジタル時代を考えるための手がかりとして、過去の機械技術時代の生活環境の変容を参照する
展覧会のカタログはアメリカのモダンデザインを知る上での基本文献の一つ

クーパー・ヒューイット国立デザイン・ミュージアム スミソニアン博物館の分館
専門家向け。図書館を利用するには2日前に予約。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: デザイン
感想投稿日 : 2012年8月13日
読了日 : 2012年7月30日
本棚登録日 : 2012年7月30日

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