アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫) [Kindle]

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  • 幻冬舎
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  • 男女の出会いや恋愛に関する6つの連作短編を収録。「アイネクライネ」、「ライトヘビー」、「ドクメンタ」、「ルックスライク」、「メイクアップ」、「ナハトモジーク」。

    著者は「あとがき」で、表紙を描いたミュージシャンの楽曲が「「悲観的な中で楽観的な話をしたい」という僕の世界と繋がっているような気がして、聴くたびにいつも嬉しくなります」と書いてる。そっか。「重力ピエロ」とか「グラスホッパー」「オーデュボンの祈り」とか読んで感じた違和感の正体がやっと分かった。残酷なこと、悲惨なことを何でもないことのようにさらっと書くのが著者の特徴なんだな。著者のリアリティ系ミステリー、登場人物に感情移入できない気持ち悪さが勝っちゃって、ストーリーを楽しめなくなっちゃうんだよな。

    本書は、そんな残酷なシーンの出てこない、普通の出会いもの。最終話「ナハトモジーク」で、各話の登場人物の関係やその後の人生が解説されていて、読後感もスッキリ!

    そういえば小学校のとき、家でモーツァルトの「アイネクライネナハトモジーク」(K.525)のレコード聴きまくってた。シングル盤サイズだったけど33回転、ドーナツ盤じゃなかったな。一番のお気に入りのクラシックだった。懐かしいな。

  • 全6章の短編集の登場人物がいろんな場所で意外な出会いに繋がるのが面白い。
    もう一度読み返したくなる。特に第二章の出会いに痺れた。
    斉藤和義さんの「ベリーベリーストロング」が思った以上にこの本の要約がされていて、音楽を聴きながら本の余韻に浸れる。

  • 僕は大袈裟だ。大仰な言葉をすぐに吐く。
    人前では決して吐かないけれど、自分の中だけではすぐにそんな言葉が顔を出している。

    でも、そんなこともいいんじゃないて思う。
    そのくらいが自分に丁度いい。

    奇跡なんてことを思い浮かべる。
    奇跡とはきっとこの物語で起こったことみたいなもの。言葉ほど大仰じゃない。でも、それよりもずっととても愛おしいと思うもの。

    いまこの物語を読み終わって、奇跡ってことを思っている。


    日本人初のヘビー級チャンピオンが出てくるけれど、その彼だってとても普通なひととして描かれている。

    世界一のチャンピオンだって、勇気を分け与えられて闘っている。自分が与えたと思ったものに、遠い未来に今度は助けられる。伊坂さんの描く群像劇は、少し滑稽で、少し情けなくて、少しだけ普通からはみ出してしまうようなそんな登場人物たちが、お互いに小さな伝播を掛け渡しあって、とても些細な力がお互いに影響を及ぼしあいながら、それぞれの世界を変えていく。決して大きな変化ではなくても、たしかに自分というものを作っていく、自分を取り囲む世界を変えていく。大袈裟だと言われたって、奇跡といいたいような、繋がりの物語を描いている。


    奇跡ていう言葉がピタリとくる。

    物語から出ているきらきらが、こちらの世界にまで伝播してきて、繋がっていくようなそんな気分が湧いてくる。

    大層なヒーローは出てこない。僕たちくらい普通の人たちがそれぞれのヒーローにいつだってなることがある。小さなヒーロー。僕達はそうやってこの世界を生きているんだと気づく。

    伝播する。この自分からだって、世界は変わる。

    そう思えることが、何ひとつ特別なことじゃないって言っている。

    今感じていることがキセキみたいなことだって、そう思う。

  • 『アイネクライネナハトムジーク』というタイトルで真っ先に思い浮かぶのは、モーツァルトの超有名な曲です。すぐに第一楽章の出だしが頭の中で鳴り響きます。
    アイネ・クライネ・ナハトムジークは『小夜曲』・・・セレナーデと訳されています。

    そしてこの小説ですが、ミュージシャン斉藤和義さんから「恋愛をテーマにしたアルバムを作るので、『出会い』にあたる曲の歌詞を書いてくれないか」と依頼され、伊坂幸太郎さんが「作詞はできないので小説を書くことならば」とお返事をしたのがきっかけで、できあがった短編集であると、あとがきで伊坂さんが述べられています。

    6編の短編からなるこの小説ですが、登場する大勢の登場人物が何らかのつながりを持っていて、また時系列も未来へ過去へと飛んだりして、早読みしてしまうとこんがらがってしまいますが、登場人物が相関する物語が好きな方には、もってこいの小説だと思います。

    軽いタッチの短編で、また登場人物が多いので頭に残らなかったのもありましたが、1番印象的なのはなんと言っても第一話『アイネクライネ』で机を蹴飛ばした藤間さん。人物描写が1番わかりやすかったのもありますし、第三話『ドクメンタ』の主人公でもあるからです。

    で、第三話の『ドクメンタ』が1番好きなお話です。なんか、周りにも似たような夫婦がいるなあと思ったり。5年に一度開催される行事での出会いが、恋愛に発展するのかなあ?と最初は思ってしまったり。
    このお話は未来過去と時系列が飛びますが、第一話の机を蹴飛ばしたエピソードの藤間さんと出会った女の人の行く末がとても気になるお話でした。

    そして印象に残っているもう1人は、お客がその時の気分や状況に応じて最高にマッチする歌を一回100円で売る謎の人物。売っている歌は、斉藤なにがしさんの歌だけだという。

    斉藤和義さんの歌を聴いてみたくなること間違いなしです。

  • いくつかの短編、その中の登場人物がまとまって、一つの物語になっています。お話も、19年前、9年前、現在と分かれていて、登場人物の成長も楽しむことができます。伊坂さんの文章は、軽やかなんだけど、こちらにグッと迫るものがあり、物語に入り込みやすいです。最後まで楽しく読めて大満足です。

  • 登場人物が多くて時系列も複雑で理解するのが難しかったのでぜひ映画を観てみたい。

    大切な出会いは身近なところにあって、ちょっとした勇気で未来は変わるんだなと希望をもらえた。

  • 「ベリーベリーストロング」

    日常に特別なんて、そうそうない。
    奇跡にそこまで、頼る歳でもない。

    ギア入れたり、疲れたり。溜息混じりの六等星達。

    夜だ。

    お。意外とみんな、この宙で繋がってんだ!軌跡も似てたり…これも奇跡かな。

  • 久々の読書。久々の伊坂さん。
    アイネクライネナハトムジーク
    小気味よいリズムで始まるそのメロディは
    幼い頃から何度も聞いた馴染み深い音
    そんな曲のタイトルを作品の題名にする伊坂さん、素敵だなぁ。
    夜の音楽の贈り物。音楽家か伊坂さんくらいしか思いつかないよ。
    仕事に子育てに追われ、無意識のうちに効率を最優先に生きている私を立ち止まらせて、自分を見つめ直す時間を与えてくれた。

    高校時代の交友関係ってけっこう大事。
    そんな台詞を聞いて、本当にそうと強く思う30代半ばの私。
    高校時代の、というか、いつの出会いだろうと蔑ろにしてはいけない。
    巡り合わせとはよく言ったものだ。
    伊坂さんの出来すぎた伏線回収とまではいかないまでも、いろんな場面でいろんな人に助けてもらい、私はここまで生きてこれたのだと思う。

  • 短編集やけど人間関係が繋がっていて、面白かった。見覚えのある名前が出てくる度に、パラパラと前のページを見返した。紙の本で読んでよかった。

  • どこかで私たちの人生は繋がっているという話でした。
    「運命的な出会いは、出会ってすぐわかるものではなく、ああ、これが運命の出会いだったのか、と後からわかるもの」という言葉に納得しました。
    劇的な出会いを求めていたら、何気ない出会いを軽いものとして見逃してしまう。
    なんてことない出会いを大切にしようと思いました。

    時系列が複雑で、あれ?この人誰だっけ?となってしまう事も多かった(汗)

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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