荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社 (2011年6月17日発売)
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本棚登録 : 1568
感想 : 235
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荒木飛呂彦さんの定義によると、ひたすら「観客を怖がらせるために作られた」映画がホラー映画ということです。さらにエンターテイメントでもあり、恐怖を通して人間の本質にまで踏み込んで描かれているような作品であれば、紛れもない傑作ということです。
正直な話、ホラー映画はかなり苦手で積極的に観ようと思ったことはないのですが、上記の定義から、『ジョーズ』『ナインスゲート』といった自分好みの映画も含まれていたのには驚きました。(笑)このため、この定義には多少異議あり!なんですが・・・。(笑)また、「ホラー」というか、サイコサスペンスやオカルト系などは割と自分は好きな方なのですが、本書では『エクソシスト』や『オーメン』、ボーダラインに位置付けられている『羊たちの沈黙』や『セブン』も取り上げられていて、何だ自分も「怖いもの」が好きなのかなと。(笑)スリルとカタルシスを求めているんだ、とちょっと抵抗してみたりして。(笑)それも「ホラー」あってだろ!と言われてしまいそうですが・・・。
しかし、これまでいわゆる純前たる「ホラー」と認識していた『13日の金曜日』や『エルム街の悪夢』『ソウ』などはやはり怖くて怖くて観れそうにありません。本書の紹介文を読んだだけで怖くて震えあがってしまったほどです。(笑)『エイリアン』『リング』『ミザリー』『アイ・アム・レジェンド』なども確かに面白くて名作だなと思いますが、あの恐ろしさを観てしまったからには再見の心境へはなかなか到達し難いなあ。(笑)『ゾンビ』を観て癒されるという著者の領域までにはまだまだ遠そうですね。(笑)
「人間の本質」には確かにダークな面があり、こうした映画が作られ観る人がいるということは、やはり人には「恐怖」を見て、味わい、疑似体験したいという欲求があるのでしょう。ただ脳内麻薬を大量発生させたいマニアな方もいるのでしょうけど・・・。(マニアな方、失礼!)そうした「怖さ」を演出するには、かなり緻密な計算やアイデアが必要ということで、観客との「知恵比べ」は今後もますます高度化していくと思われ、これにはちょっと感心ものです。熱狂ファンではないだけに「楽しみ」です、とはなかなか言えないところではありますが。(笑)
単なる猟奇的な部分の「怖さ」だけではなく、異質なものへの「恐怖」や見えないものへの「恐怖」、社会的「恐怖」など、多面的な「恐怖」のアプローチによる人間心理とその行動様式についての視点はなかなか鋭いですね。本書では荒木氏のホラー映画への限りない愛が感じられて、その深奥さにはただただ感銘します。(笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2013年11月3日
読了日 : 2013年11月3日
本棚登録日 : 2013年10月9日

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コメント 2件

nejidonさんのコメント
2013/11/04

mkt99さん、こんにちは♪
いつものことながら丁寧で素敵なレビューですね。
お薦めしてよかった!と感心しながら読みました。
特にラスト4行は↑↑、私も載せ切れなかった部分なので納得のレビューです。
ホラーは怖いものとひとくくりにする私のような人間は、恐怖というものもひとくくりにしているのだなと、気づかされたところです。
でもね、なかなかクリアできませんよね。
楽天の勝利で相当数の商品が割り引かれている現在、荒木さんの画集も入手しようかと画策中です。

mkt99さんのコメント
2013/11/04

nejidonさん、こんにちわ!
毎度、コメントありがとうございます。(^o^)/

本当にお薦めいただきありがとうございました。怖さに震えながら読んだのですが(笑)、荒木さんのホラー映画に対する幅広い知識と愛情はとても楽しめました。
読み始めたのは実はもっと前だったのですが、その前に読了した小川洋子ワールドに感動し感涙にむせんで余韻を引きずっているさ中に『ゾンビ』の話が始まって(笑)、その余りのギャップに耐え切れず(笑)、しばらく中断してしまいこの時期の読了となってしまいました。

「恐怖」とはヒトの自己防衛本能のアンテナの一つだと思いますが、様々な局面の様々なレベルで感じる「恐怖」を人間は発展させて「娯楽」に変換できるようになってしまった。怖がりの自分には「楽しみ」の幅は思いっきり狭いのですが、特に猟奇系ネタは怖すぎてとても楽しむどころではありません。
「田舎へ行ったら襲われた」系ホラーというカテゴライズは自分も吹き出してしまいましたが(笑)、まさにこの領域は猟奇的に襲われてなんぼの話なので、自分にとってとてもハードルが高い分野です。すぐに被害者と同化してしまい(笑)、ほら、そのドア開けるなっ!とか、そのみえみえな家に行く奴あるか、あほ!とか、そこでみんなと離れるなっ!ばか!とかいう具合で、それこそ監督の手の中で転がされやすい精神構造だからなのかもしれません。(笑)

楽天の優勝で値引きセールをやっているのですか!確かにそうですよね。自分も何か買わないと!(←感化されやすい性格(笑))

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