荒木飛呂彦さんの定義によると、ひたすら「観客を怖がらせるために作られた」映画がホラー映画ということです。さらにエンターテイメントでもあり、恐怖を通して人間の本質にまで踏み込んで描かれているような作品であれば、紛れもない傑作ということです。
正直な話、ホラー映画はかなり苦手で積極的に観ようと思ったことはないのですが、上記の定義から、『ジョーズ』『ナインスゲート』といった自分好みの映画も含まれていたのには驚きました。(笑)このため、この定義には多少異議あり!なんですが・・・。(笑)また、「ホラー」というか、サイコサスペンスやオカルト系などは割と自分は好きな方なのですが、本書では『エクソシスト』や『オーメン』、ボーダラインに位置付けられている『羊たちの沈黙』や『セブン』も取り上げられていて、何だ自分も「怖いもの」が好きなのかなと。(笑)スリルとカタルシスを求めているんだ、とちょっと抵抗してみたりして。(笑)それも「ホラー」あってだろ!と言われてしまいそうですが・・・。
しかし、これまでいわゆる純前たる「ホラー」と認識していた『13日の金曜日』や『エルム街の悪夢』『ソウ』などはやはり怖くて怖くて観れそうにありません。本書の紹介文を読んだだけで怖くて震えあがってしまったほどです。(笑)『エイリアン』『リング』『ミザリー』『アイ・アム・レジェンド』なども確かに面白くて名作だなと思いますが、あの恐ろしさを観てしまったからには再見の心境へはなかなか到達し難いなあ。(笑)『ゾンビ』を観て癒されるという著者の領域までにはまだまだ遠そうですね。(笑)
「人間の本質」には確かにダークな面があり、こうした映画が作られ観る人がいるということは、やはり人には「恐怖」を見て、味わい、疑似体験したいという欲求があるのでしょう。ただ脳内麻薬を大量発生させたいマニアな方もいるのでしょうけど・・・。(マニアな方、失礼!)そうした「怖さ」を演出するには、かなり緻密な計算やアイデアが必要ということで、観客との「知恵比べ」は今後もますます高度化していくと思われ、これにはちょっと感心ものです。熱狂ファンではないだけに「楽しみ」です、とはなかなか言えないところではありますが。(笑)
単なる猟奇的な部分の「怖さ」だけではなく、異質なものへの「恐怖」や見えないものへの「恐怖」、社会的「恐怖」など、多面的な「恐怖」のアプローチによる人間心理とその行動様式についての視点はなかなか鋭いですね。本書では荒木氏のホラー映画への限りない愛が感じられて、その深奥さにはただただ感銘します。(笑)
- 感想投稿日 : 2013年11月3日
- 読了日 : 2013年11月3日
- 本棚登録日 : 2013年10月9日
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