伊藤博文の国家構想や政治思想を内在的に思想史的方法をもって明らかにして、その「漸進主義」やリアリズムに一貫性を見出そうとしているが、著者の試みは失敗している。「善意の解釈」や史料根拠不明の思い込みや提灯持ち的な賞賛の文言を無視して、引用史料と事実記述だけを読めば、むしろ伊藤の状況主義的で行き当たりばったりな思考が明るみに出る。いずれにせよ、伊藤の主観的な思想や行動が、現実の政治・社会において客観的にどう機能したかがほとんど分析されておらず、歴史研究というより単なる顕彰に堕していると言ってよい。
唯一、優れているのは、帝室制度調査局に関する部分で、ここでは著者本来の専門である法制史の知見が遺憾なく発揮されており、勉強になった。
読書状況:読み終わった
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評伝
- 感想投稿日 : 2014年10月24日
- 読了日 : 2014年10月24日
- 本棚登録日 : 2014年10月24日
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