東京書籍の1972年と2006年の教科書を比較し、記述がどのように変わったか、その背景にどのような研究の進展があったかを考える一書。よく知られている話が多いが、こうやってまとまった記述になっていると、改めて面白いと思う。
ただ、不満もある。それも大きな不満。
(1)扱っているのが東京書籍だけであること。他社の教科書はどうなのだろうか。東京書籍に限定せず、他社の教科書も取り入れるともっと変化の様子がよくわかったのではないかと思う。
(2)教科書の執筆者について触れていない。といっても教科書のどの部分を誰が書いたのかは公開されていないので、せめて1972年と2006年の執筆陣は掲載してもよかったのではないか。教科書の巻末に執筆者は載っているのだから。
(3)これが最大の問題なのだが、近代の記述が日露戦争で終わっている。これでは竜頭蛇尾と言わざるをえないだろう。というか、意図的に避けたのだろうな、という気すらしてくる。しかし1990年代から教科書にとってもっとも問題になっているのが近代史、とりわけアジア太平洋戦争近辺であるのだから、そこの変化を追わないというのは残念である。この本が単なる「一般の面白い本」で止まってしまい、歴史学・教育学として意味のある本にもう一歩なりきれていないのではないだろうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2016年1月13日
- 読了日 : 2015年12月9日
- 本棚登録日 : 2016年1月13日
みんなの感想をみる