ドイツ・イデオロギー 新編輯版 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2002年10月16日発売)
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感想 : 21

『ドイツ・イデオロギー』は、1845から46年にかけてマルクスとエンゲルスが共同執筆した草稿である。この草稿の編集をめぐっては、研究者によりこれまでにいくつかの版が発表されてきた。初めて公刊されたのは1926年のリャザーノフ版であるが、リャザーノフがスターリンに粛正されると1932年にアドラツキー版が刊行された。長らくこれが「決定版」と看做され、古在由重による岩波文庫の旧訳もアドラツキー版に基づく「抄訳」であった。廣松渉は夙にアドラツキー版の問題性を断罪してきたが(『マルクス主義の成立過程』参照)、その集大成が自ら編集した『手稿復元・新編輯版ドイツ・イデオロギー』(原文テキスト+邦訳テキスト)である。それから約30年の時を経て、ついに古在訳に代わり廣松訳が岩波文庫に採用されることになったが、廣松の他界により廣松訳をベースに小林昌人が翻訳を完成させた。廣松によれば『ドイツ・イデオロギー』はマルクスが疎外論から物象化論に転回したことを示す重要文献であり、それを廣松自身の翻訳で文庫として読むことができるのは実に有り難い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会科学
感想投稿日 : 2015年7月6日
読了日 : 2015年6月29日
本棚登録日 : 2015年6月29日

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