自閉症の子を持って (新潮新書 118)

著者 :
  • 新潮社 (2005年5月1日発売)
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本棚登録 : 76
感想 : 10

これは読むのが辛い本である。親が骨身を削って奔走しかなりの僥倖に恵まれなければ、たとえ我が子が自閉症と診断されても「適切な訓練」は受けられない。公的機関に相談しても担当者によって対応は異なるし、公的施設の受け入れが難しい場合も民間施設との連携は殆んどない。結局、システムとして不完全ということである。自閉症児の親は何の展望ももてないまま疲弊し、ただただ打ちのめされる。著者が「親に対するケアが絶対に必要だ」と力説する所以である。著者の場合、最初に診察を受けた女医の「適切な訓練をすれば、小学校入学までに他のお子さんと変わらないレベルに発達する可能性は十分にある」という言葉が支えになった。こうした経験の中で発せられる次の言葉に、我々も自省を迫られる。

「心やからだにハンディを抱えた人々が『障害者』になるのは、本人ではなく周囲、社会の仕組みや健常者の心の在り方のせいなのだと思えてならない」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教育
感想投稿日 : 2012年2月25日
読了日 : 2012年2月25日
本棚登録日 : 2012年2月25日

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