鈴木 光司 『アイズ』
(新潮社・2005年5月 / 新潮文庫・2008年1月)
恐怖をかきたてる現象は、日常の何気ない空間に潜んでいる――。
ホテルの窓辺にあられもない格好でつながれた美しい女の正体とは(「クライ・アイズ」)。
マンションのドアに落書きされた不気味な文字(「しるし」)。
ゴルフ場で偶然発見された死体は、槍のようなもので刺し貫かれていた――(「杭打ち」)。
あなたの身にもいつかきっと降りかかる、得体の知れない恐怖を描くホラー短編集。(新潮社HPより)
「もうホラーは書かない」宣言までしていた鈴木光司が久々に書いたホラー短編集。
どれも粒ぞろいだが、今ひとつインパクトがなかったなぁ・・・。
着地までの持って行き方というか、話の流れが似たような方向に向いていて、「うまいなぁ」と思えても「すごいなぁ」とは思えなかった。
毛色が違うとはわかっているのだけれど、どうしても過去の作品と比較してしまう。
文庫版の解説をあの竹内薫が書いていて、そこにあったのが、「招き」という単語。
なるほど、確かにこの短編集は「招き」の物語で、まさにその一言にすべてが集約されている。
怨念、孤独、愛情と、その思いは様々だが、強い気持ちが人を招き、惹きつける。
『リング』『らせん』『ループ』のような頭の中を掻きむしられるような恐怖ではないが、
ほんの何気ない日常にこんなに深く暗い穴があったのかと驚かされるような、静かな怖さを感じた。
65点(100点満点)。
- 感想投稿日 : 2012年9月23日
- 読了日 : 2008年2月5日
- 本棚登録日 : 2012年9月23日
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