梶尾 真治 『精霊探偵』
(新潮社・2005年9月 / 新潮文庫・2008年2月)
交通事故で愛する妻を亡くして以来、なぜか私には人の背後霊が見えるようになってしまった。
特殊な能力を見込まれて人捜しを依頼された私は、どこかで妻の霊に会えることを期待して探偵のまねごとを始める。だが、手がかりの奇妙なカードをめぐり、不穏な出来事が次々と起こり――。
驚きのラストが待ちうける、ちょっと不思議でほんわか切ないスピリチュアル・ミステリー。
「フロム・ダスク・ティル・ドーン」という映画をご存知だろうか。
R・ロドリゲスが監督で、J・クルーニーやQ・タランティーノが出演している。
ある兄弟が銀行を襲撃して人質とって逃亡、みたいな感じで始まるのだが、途中で酒場に立ち寄ったあたりから話がおかしくなり始め…、という内容で、とにかくその話の変貌ぶりが凄まじい。
この映画を見て以来、話が途中であらぬ方向に行ってしまう展開に遭遇すると、この映画を思い出す。
『精霊探偵』もまさしくそんな一冊であった。
その原因は多分にこの『精霊探偵』というネーミングにあると思っているのだが、それを逐一説明してしまうとネタバレになってしまうので、ここでは言及しないでおく。
(「精霊」も問題だが、「探偵」も問題なんだよなぁ)
こんなことを書くと「なんだ、面白くねぇのか」と誤解されそうなので先に言っておくが、
非常に面白く読ませていただいた。
鏡やカメラについての話など、陳腐な設定も散見されるが、それを補ってあまりある魅力がこの作品にはある。
最大の謎はやはり、主人公の背後霊は誰なのか?ということに尽きる。
(私の場合は不幸にもオチが予想できてしまい、ああまさかまさかまさか…と思いながら頁を繰ることになってしまったが、こんなことは年に1回あるかないかなのでしょうがない)
荒戸、小夢といった脇を固めるキャラも出色なら、それとなく張られた伏線も見事。
これでラストが予想と違っていれば★半分増えてたのに、もったいない。
80点(100点満点)。
- 感想投稿日 : 2012年9月23日
- 読了日 : 2008年2月6日
- 本棚登録日 : 2012年9月23日
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