百年後、ぼくらはここにいないけど

著者 :
  • 講談社 (2016年7月13日発売)
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本棚登録 : 150
感想 : 22
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中学校チレキ(地理歴史)部の、ジオラマづくりを描いた作品。スポーツものに比べると地味だ…と最初は思ったが、ここには独特の世界が広がっていて、比較できないと分かった。百年前の渋谷を調べるため訪ね歩く彼らの姿から、TV番組「ブラタモリ」が思い浮かぶ。今、郷土史研究はちょっとかっこいいかも。

部員それぞれも個性的だ。しかしそれがわかるのは意外にも後半以降。はじめのうちは、苗字と名前が結びつかないし、人間関係も明白ではない。他小説だと序盤ですぐに分かる個性も、本書では前半詳しく説明されない。これは意図的なのだろうか。後半、主人公健吾が失恋について述べるあたりから、俄然各人が光り始める。まるでジオラマが完成に向かうのと連動するかのように、部員たちの結束が固くなっていく。スポーツとは違った面白みが、ここにはある。

本書は、渋谷と「ジオラマ」というものをよく知っているとより楽しめるだろう。渋谷にある地名は知っているものの、ジオラマ制作に使う材料については専門用語が全く分からず、思い描けなかったのが残念。せめて出来上がった作品の絵でも載せてほしかった。

未来を見据えた作品として後味はよい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本作家な行
感想投稿日 : 2016年8月17日
読了日 : 2016年8月17日
本棚登録日 : 2016年8月17日

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