一葉の「たけくらべ」 ビギナーズ・クラシックス 近代文学編 (角川文庫ソフィア)

制作 : 角川書店 
  • 角川書店 (2005年4月23日発売)
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感想 : 14
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 吉原の隣にある町、大音寺前は、遊び客を乗せた人力車が夜昼となく、せわしく行きかう賑やかな町。住民の大半は、吉原で従業員として働き、町独自の価値観が出来上がっていた。子どもは幼い頃から、自然と色恋沙汰が耳に入るし、言葉遣いも言動も、どこかしらおませな様子で…
 そんな大音寺前の町では、表町組と横町組という2つの子ども組が対立。表町組は資産家の息子正太郎、横町組はとび職の息子の長吉がそれぞれの大将。出会えば、何かと衝突してばかりの2組だったが、正太郎の思い人、遊女屋の美登里と、長吉が頼りにする龍華寺の息子信如は人知れず、互いを意識する存在で…。

 何度も挫折してしまい、まんがでしか読めなかった「たけくらべ」を角川ビギナーズ・クラシックで読んでみることにしました。
 原文は味わい深いけど、注釈がないと進めない。度々注釈を見ると、なんだか楽しくない。そんなとき、この本はとても便利です。通釈文があって、原文があってとサンドイッチ式に進んでいくので、とても読みやすい。内容をとってから、原文を読むと、味わい深くテンポよく読むことができます。そして1章ごとに、解説がつき、コラムがつき、本文にも写真あり、道具や衣類、遊びなどの挿絵ありで、まさに至れり尽くせり。物語を堪能することができました。
 プラトニックな恋や、思春期の恋への憧れ、大人への戸惑いに加え、時代と、吉原という特殊な環境がからみ、切なく美しい物語に仕上がっています。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典・近代文学
感想投稿日 : 2010年10月16日
読了日 : 2010年10月14日
本棚登録日 : 2010年10月14日

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