遺体: 震災、津波の果てに

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  • 新潮社 (2011年10月27日発売)
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 三陸海岸に面した黒い岩場と紺碧の海が広がる港町釜石市。鮎が泳ぐ美しい川が流れ、数多くの海産物が養殖、水揚げされている自然豊かな町。
 その町を2011年3月11日、巨大地震が襲う。そして、津波が通称「マチ」と呼ばれる港側の繁華街に押し寄せ、町を一変させてしまった。
 遺体安置所となった廃校に、次々と運び込まれる被災者たちの亡骸を前に、呆然と立ち尽くす民生委員は、かつて葬儀社に勤めた経験から、現場責任者を買って出る。次に予想される混乱を少しでも、回避するために。
 市の生涯スポーツ課に属する市職員は、突然課長命令で、遺体の搬送をすることに。そこで待っていたのは、変わり果てた町と、想像を絶する人々の最期の姿だった。
 遺体の検歯をすることになった、釜石歯科医師会の会長は、死後硬直の始まった遺体と向き合う。それは、大切な誰かを失った人々の悲しみの中での、むなしさばかりが募る作業で……。
 変わり果てたふるさとと夥しい数の遺体を前に、悲しみに打ちひしがれる暇もなく、真摯に「弔う」作業に取り組んだ人々の記録。

 日常生活が切り取られる。昨日までの景色が一変する。変わり果てた姿の人々は、みな昨日まで笑ったり、挨拶を交わしたりしていたこの町の人たち。
 しかし、悲しみにひたってはいられない。時は立ち止まってくれないのだ。

 この本に出てくる人々は、誰かがやらねばならないことだからと、気の遠くなる作業に携わった人たち。
一連の作業に携わった方々に敬意を表したいという思いと、どんなにつらい読書であっても、この本を読んでほしいという気持ちでいっぱいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2012年1月28日
読了日 : 2012年1月28日
本棚登録日 : 2012年1月28日

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