BC級戦犯裁判 (岩波新書 新赤版 952)

著者 :
  • 岩波書店 (2005年6月21日発売)
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(2009.08.20読了)
A級戦争犯罪:「平和に対する罪」東京裁判、ニュルンベルク裁判
B級戦争犯罪:「通例の戦争犯罪」(国際法で定められていた)
C級戦争犯罪:「人道に対する罪」

●BC級戦犯裁判(日経、2009年8月11日・朝刊)
連合国7カ国(米国、英国、オーストラリア、フィリピン、フランス、オランダ、中華民国)により、1945年10月から1951年4月まで、アジア・太平洋の49カ所で行われた。総数は2244件、被告5700人。死刑判決が984人、無期・有期刑が約3400人、無罪が1018人だった。

この本は、BC級戦犯裁判の概説書です。
章立ては以下の通りです。
序章 なぜ、いま戦犯裁判か
第1章 なぜ戦争犯罪が裁かれることになったのか
第2章 戦犯裁判はどう進んだか
第3章 八か国の法廷(ソ連での裁判が追加されています)
第4章 裁かれた戦争犯罪
第5章 裁いた者と裁かれた者
第6章 裁判が終わって―戦犯の釈放
終章 BC級戦犯裁判とは何だったのか

戦犯裁判というのは、第二次大戦が終了した後に突然出てきた印象だったのですが、第二次大戦中から連合国内で準備が進められてきたのだそうです。

代表的裁判として「シンガポール華僑粛清事件」「石垣島米兵処刑事件」「中国人強制労働・花岡事件」の三つが紹介されています。

BC級戦犯裁判で裁かれた人たちの中に朝鮮人148人、台湾人173人が含まれています。戦争中は、日本人だったので、軍人、通訳、俘虜収容所の監視員として参加しています。したがって、日本人として裁かれたのですが、1952年に日本が独立を回復した時、日本政府は朝鮮人らから一方的に日本国籍を剥奪し、軍人恩給などの援護の提供を拒否しています。国際紛争への自衛隊派遣も大事かもしれませんが、太平洋戦争中の旧日本人への補償を行うことも大事なのではないでしょうか。

著者は、BC級戦犯裁判の意義を以下のように述べています。
「連合軍は、戦争犯罪人を裁判で処罰すると宣言することにより、そして実際に戦争犯罪を捜査し、容疑者を逮捕し、裁判にかけて処罰したことによって、民衆の怒りを抑えることができた。法による裁きとは、まず被害者による報復をやめさせるという効果を持つ。」
「戦争犯罪を国際社会によって犯罪と認定し裁いたことは、不十分ではあるがその後の国際社会の判断の基礎になった。」

著者 林 博史
1955年、神戸市生まれ
1985年、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了
現在、関東学院大学教授
(2009年8月27日・記)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 戦後
感想投稿日 : 2009年8月21日
読了日 : 2009年8月20日
本棚登録日 : 2009年8月20日

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