平家物語を読む: 古典文学の世界 (岩波ジュニア新書 16)

著者 :
  • 岩波書店 (1980年5月20日発売)
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感想 : 9
5

(2005.06.14読了)(2004.11.23購入)
副題「古典文学の世界」
「平家物語」は、全12巻からなる戦記文学で、成立は、平家が滅んで40年ぐらいあとということです。「平家物語」に登場する人物は千人をはるかに超えるほど多い。その中から十人を選び出し、それぞれの生き方を紹介しているのがこの本です。
平忠盛、祗王・仏、俊寛、文覚、平清盛、木曾義仲、源義経、平忠度、平知盛の十人です。
ところどころに、原文を入れて、その解説もしてくれるので、「平家物語」の原文の雰囲気を味わいながら、平家物語の世界に誘ってくれる。
縮約版「平家物語」は、原文の雰囲気が全くないので、それを補ってくれるので嬉しかった。本当は、講談社学術文庫の12巻を読めればいいのだけれど、その気力は今はない。
●平忠盛
清盛の父である。1131年3月に、鳥羽上皇のために得長寿院という寺院を作り、三十三間堂に一千一体の仏像を据えて献上した。上皇は喜んで、内裏の清涼殿、殿上の間に出仕することを許可した。平家はこのとき、始めて公然と貴族の仲間入りすることを許され、父祖代々にわたる宿願を達成した。藤原一族の独占に風穴を開けたことにらる。
●祗王・仏
祗王も仏も白拍子の名前である。白拍子は、辞書を引くと「平安末期に起こった歌舞。また、それを業とする遊女。最初、直垂・立烏帽子に白鞘巻の刀を差した男装で今様などを歌いつつ舞ったが、のち殿上人・童児・遊僧なども舞うようになった。」とでている。男装で、歌いつつ舞を舞う人。芸能人ということ。静御前も白拍子である。
平清盛は、祗王という白拍子を寵愛していた。仏御前という白拍子が、平清盛の別邸に押しかけ舞を舞いたいと申し出るが、祗王がいるから必要ないと断られる。祗王のとりなしで、今様を歌う。見事な歌いぶりだったので、舞わせて見ると、見事な舞だった。その結果、今まで寵愛していた祗王を追い出し、仏御前を屋敷にとどめた。
その後も、一度捨てた祗王を呼び出して、仏御前を慰めるために舞を舞えといってきたりするので、出家してしまう。仏御前もいずれ我が身も、祗王と同じことになるとを覚り、祗王の基を訪ねて、出家してしまう。
●平忠度
薩摩守忠度とも呼ばれ、無賃乗車の代名詞にされている人です。
1183年7月25日、木曾義仲に追われて、平家は都落ちをします。平忠度は、歌人藤原俊成卿の邸に立ち寄り、勅撰和歌集を編纂するときは、一首也とも入れてくれるようにお願いし、秀歌と思われるものを百余首書き集めた巻物を託して去ります。
後に編纂された「千載和歌集」に読人知らずとして、一首入っています。
 さざなみやしがのみやこはあれにしをむかしながらのやまざくらかな
平忠度は、位置の谷の合戦で討ち取られてしまうのですが、討ち取ったほうは名前が分からないので、箙に結び付けてある文を解いてみたら、歌が一首書いてあり、忠度と署名があったので、忠度と判ったということです。

著者 永積 安明
1908年 山口県生まれ
1932年 東京大学文学部国文科卒業
神戸大学名誉教授

☆関連図書(既読)
「義経(上)」司馬遼太郎著、文春文庫、1977.10.25
「義経(下)」司馬遼太郎著、文春文庫、1977.10.25
「炎環」永井路子著、文春文庫、1978.10.25
「大塚ひかりの義経物語」大塚ひかり著、角川ソフィア文庫、2004.09.25
「義経」宮尾登美子著、日本放送出版教会、2004.11.25
「平家物語」高野正巳訳・百鬼丸絵、講談社青い鳥文庫、1994.04.15
「平泉 よみがえる中世都市」斉藤利男著、岩波新書、1992.02.20
「奥州藤原氏 平泉の栄華百年」高橋崇著、中公新書、2002.01.25
「源義経」五味文彦著、岩波新書、2004.10.20

(「BOOK」データベースより)amazon
『平家物語』は、王朝貴族社会から、中世武家社会へと大きく移り変わった時代、平家一門の人々がたどった運命を描いた語り物文学です。この本では、平清盛、知盛、祇王、俊寛、木曾義仲など10人の登場人物をとりあげ、原文にふれながら、『平家物語』の全体像と文学としての豊かさをつたえます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 源義経とその周辺
感想投稿日 : 2010年2月5日
読了日 : 2005年6月14日
本棚登録日 : 2005年6月14日

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