恋のからたち垣の巻 異本源氏物語 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (1990年6月20日発売)
3.43
  • (1)
  • (4)
  • (9)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 53
感想 : 3
4

(2008.10.15読了)
「光源氏とヒゲの伴男シリーズ」三冊目です。
●「あとがきに代えて」(270頁)
はじめの「私本・源氏物語」は、原典の「源氏物語」に割に忠実に書いている。(尤もそれは、ヒゲの伴男からみた「源氏物語」というていのものであるが)二冊目の「春のめざめは紫の巻」は、原典「源氏物語」の変奏曲である。登場人物も「源氏物語」中のヒロインたちを拉してきているけれど、味つけは全く私流に変えてしまっている。その変え具合を、お楽しみ頂く、というもの。
本書の「恋のからたち垣の巻」-異本源氏物語-は、これは全く「原典」に関係ない。平安中期の京の都に活躍する光源氏とヒゲの伴男をお娯しみ頂ければよいというもの。

源氏物語が戯画化されてしまって、このままで、漫画になってしまうようで、読んでいて勝手に漫画の場面が目に浮かんでしまいます。読者以上に作者の田辺さんが一番楽しそうです。
それぞれ独立して読める7つの話が収められています。
「恋のからたち垣の巻」は、光源氏が女盗賊に誘拐される話。
「恋の変生男子の巻」は、光源氏が女装束で、京の庶民の生活を覗きに出かけ、猿楽見物をします。瓜子姫を演ずる女性に惚れるのですが、実は、・・・。
「恋の妻観音の巻」は、他人の見た夢を売る話。光源氏も美女を授かる夢を買い取るのですが、夢がかなうためには、清水寺への千度詣でが必要。三十二回詣でたところで、「千度詣り」を売る人が現れ、これを買い取ります。そして現れた美女は、・・・。
インターネットでなんでも売り買いされる現代を先取りしているような話です。
(2008年10月18日・記)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 田辺聖子:作家
感想投稿日 : 2010年3月13日
読了日 : 2008年10月15日
本棚登録日 : 2008年10月15日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする