江戸開城 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1987年11月26日発売)
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「江戸開城」海音寺潮五郎著、新潮文庫、1987.11.25
318p ¥360 C0193 (2018.10.06読了)(2009.04.25購入)(1990.04.20/4刷)
9月30日のNHK大河ドラマ『西郷どん』は、「第37回江戸無血開城」の予定だったのですが、台風報道のため放映延期となりました。
9月30日に放映されていれば、見てから読む、だったのですが、10月7日に延期になりましたので、読んでから見る、になりました。
この本は、徳川方が鳥羽・伏見の戦いに敗れ、徳川慶喜が大阪から江戸に船で逃げ帰ってしまい、官軍が陸路で江戸に迫ってきているあたりから始まります。終わりは、彰義隊が上野の山に立てこもって、官軍に攻められ、立てこもっていた建物に火をかけて江戸から逃げ出したところで終わっています。
当時の手紙や当事者の回顧談などをもとにつづっていますので、歴史と小説の中間的な書き方ということになります。
歴史の教科書や、通史では、数行や数ページでしか書かれない歴史の一場面が、300頁ほどにわたって書かれているので、色んな事があったことがわかります。
日本語力が不足しているので、手紙や回顧談が十分意味をくみ取れないのが残念です。

【目次】
革命の地の祭壇
札つきの和平主義者勝安房
官軍先鋒三島に達す
山岡鉄太郎登場
パークスの横槍
西郷・勝の会見
西郷と勝に対する諸藩兵の不平
勝とパークス
開城はあったが
徳川家の処遇問題
勝の慶喜よび返し運動
さまざまな反薩的批判
彰義隊
彰義隊討伐その前夜
彰義隊潰滅
解説  尾崎秀樹

●西郷の手口(10頁)
声を大にすることによって敵をおそれさせ見方を奮い立たせ、局を結ぶにあたってはうんと寛大慈悲の処置をして懐かせるというのは、西郷の戦さを処置する場合の手口といってよいのである
●明治維新(11頁)
明治維新は王政復古という名で行われたが、実は復古ではなかった。公家に政治能力のないことは明らかである。大化改新から平安朝初期までの王政時代にかえせないことは言うまでもない。だから、名は王政復古でも、実は天皇の下に公家・大名・諸藩臣の優秀分子で合議政治を行おうというのであった。
●徳川氏処分について(18頁)
徳川氏処分についての意見書
一 よく恭順しているなら、慶喜の処分は、寛大仁恕の思召しをもって、死一等を減ぜられること。
一 軍門へ伏罪の上、備前へお預けのこと。
一 城明渡のこと。但し軍艦・鉄砲等を引渡すことは言うまでもない。
この意見書は、西郷と大久保とが相談して、岩倉の諒解を得たものの写しであった。
●勝の信念(38頁)
勤王や佐幕の争いなどは末の末のもので、国を愛し民を愛することが根本であるというのは、勝の終生かわらない信念であった。
●陸軍総裁の目的(50頁)
彼(勝・陸軍総裁)には三つの目的がある。一つは同胞相争うようなことをして日本を危険に陥れてはならないということ。一つは慶喜の生命の安泰と徳川家の名誉を守ること。もう一つはできるだけ多く徳川家の利益になるように局を結ぶこと。以上の三つである。
●蟄居謹慎(56頁)
二月十二日、慶喜は城を出て、上野寛永寺の塔頭大慈院に入り、蟄居謹慎の生活に入った。
●世界並み(135頁)
幕末・維新頃の一流の志士らは何事においても日本が世界なみでないことを恥じて、肩身せまく思っていた。一流の志士らが幕府の存在を恥じたのも、一国に両主あるのは世間なみでない特殊なことだったからである。慶喜の処分においても、文明国なみの処分法をパークスに教えられたと人々は受け取ったと思ってよい。

☆関連図書(既読)
「西郷どん(上)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
「西郷どん(中)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
「西郷どん(下)」林真理子著、角川書店、2017.11.01
「話し言葉で読める「西郷南洲遺訓」」長尾剛著、PHP文庫、2005.12.19
「西郷隆盛『南洲翁遺訓』」先崎彰容著、NHK出版、2018.01.01
「西郷家の女たち」阿井景子著、文春文庫、1989.08.10
「西郷と大久保」海音寺潮五郎著、新潮文庫、1973.06.30
「寺田屋騒動」海音寺潮五郎著、文春文庫、2007.12.10
「岩倉具視 維新前夜の群像7」大久保利謙著、中公新書、1973.09.25
「明治天皇を語る」ドナルド・キーン著、新潮新書、2003.04.10
「花神(上)」司馬遼太郎著、新潮文庫、1976.08.30
「花神(中)」司馬遼太郎著、新潮文庫、1976.08.30
「花神(下)」司馬遼太郎著、新潮文庫、1976.08.30
(2018年10月9日・記)
(表紙カバーより)
革命の祭壇に血の犠牲を要求しながら、実際には寛大な処分を考えていた西郷隆盛。徳川慶喜の動揺と優柔不断、幕閣の向背に抗して和平の道をさぐる勝海舟。味方の中に敵をかかえ、敵の中に信ずべきものを信じ、信義と力ともに誤つことなかった両千両役者の息づまる対峙を中心に、幕末動乱の頂点で実現した史上最高の名場面、奇跡の江戸無血開城とその舞台裏を描く巨匠晩年の精華。
(「BOOK」データベースより)amazon
革命の名の下に、血の犠牲を要求するため、官軍を率いて江戸に入った西郷隆盛。動揺する徳川慶喜と幕閣の向背に抗し和平の道を模索する勝海舟。両巨頭が対峙した歴史的二日間は、その後の日本を決定づける。幕末動乱の頂点で実現した史上最高の名場面の、千両役者どうしの息詰まるやりとりを巨匠が浮かび上がらせる。奇跡の江戸無血開城とその舞台裏を描く、傑作長編。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説(幕末)
感想投稿日 : 2018年10月9日
読了日 : 2018年10月6日
本棚登録日 : 2018年10月2日

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