江の生涯: 徳川将軍家御台所の役割 (中公新書 2080)

著者 :
  • 中央公論新社 (2010年11月1日発売)
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感想 : 14
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(2011.01.06読了)(2010.12.21借入)
「江」は、2011年のNHK大河ドラマの主人公です。
浅井長政と織田市(織田信長の妹)の三女として生まれ、徳川秀忠に嫁ぎ、千姫、家光、東福門院和子、等の母でもあります。長姉は茶々(淀君)ですので、豊臣秀吉が亡くなってから、豊臣方の姉と徳川方の妹(江)の間で敵対関係になってしまう。
姉(淀君)の子、豊臣秀頼と自分(江)の子、千姫は、夫婦だったのですから、平和裏に政権移譲がなされれば、親密な親戚として、行き来できたことでしょう。
戦国の三武将として誰でも知っている織田信長が伯父で、豊臣秀吉が姉の夫で、徳川家康が舅だという事実には、なんとも驚いてしまいます。
興味深い人物であるにもかかわらず、この本を読むと「江がその姿をはっきり現わす」史料が全く残っていないというという事実に驚いてしまいます。
ということは、ドラマは、作者が100%想像して書くことになる、ということになります。書き易いのか、書きにくいのかは、作者次第でしょう。
江が生まれたのは、1573年。秀忠と結婚したのは、1595年で23歳の時です。秀忠は、江より6歳下ですので、この時17歳ということになります。亡くなったのは、1626年9月15日で、54歳でした。
江の父、浅井長政は、1573年9月1日、織田信長との戦に敗れ自害しました。1582年、母の市が、柴田勝家と再婚したため、越前北の庄に移り、1583年4月24日、母市は、秀吉との戦に敗れた柴田勝家と共に自害しました。生まれた年に父を失い、11歳で母を失ったことになります。

●江戸時代の名前の表記(19頁)
江戸時代の人々は、音や訓が同じであれば、どの漢字を宛てるのかに関してはあまり厳密に考えないところがる。宛て字に対する許容範囲が、とても広いのである。
「江」についても「郷」や「五」「督」の表記があるとのことです。
●江は三度結婚した(37頁)
江が婚姻したのは、佐治一成・羽柴秀勝・徳川秀忠の三人である。
●佐治一成とは婚約したが輿入れはしていない(72頁)
江は佐治一成と縁を結んだだけで、入輿はしていない。
(婚約は、1574年頃ということなので、2歳。離縁は、1584年頃ということなので12歳。年齢的に見て、輿入れはしていないだろう、ということです。)
●二度目の夫は、羽柴秀勝(75頁)
二度目の結婚の時期は、1586年説と1592年説があり、この本の筆者の福田さんは、1586年説を支持しています。羽柴秀勝は、1592年9月9日、朝鮮で病死しています。
(兵を引いて、朝鮮に出兵していました。)
●三度目の夫は、徳川秀忠(114頁)
1595年9月、江は、徳川秀忠と結婚した。江は、23歳。秀忠は、17歳です。
1597年、江と秀忠の間に初めての子、千を授かる。1598年、秀吉は、秀頼と千の縁組を取り決めた。
1603年、秀頼(11歳)と千(7歳)の婚儀が行われた。
1604年、家光誕生。母親は、江という説とそうではないという説がある。
(福田さんは、江は家光の生母ではない、と結論付けています。(171頁))
1605年、江は、男児を産んだ。幼名国松、後の忠長である。(174頁)
1607年、江は女児を産んだ。幼名を松、通称を和、諱名を和子、院号を東福門院。
1611年、男児が生まれた。秀忠の子であるが、母は江ではない。この男児は、後の保科正之です。
●養源院(198頁)
浅井一族のために建立された養源院であったが、茶々の死後はその遺志を江が引き継ぐとともに、新たに豊臣一族の供養の場ともされた。
養源院には、江の御影が一幅伝来している。彼女の唯一の肖像画である。
●江と秀忠の子供(234頁)
江と秀忠との間に生まれたのは、千・初の二女と忠長の一男である。それ以外の長丸・家光・正之の三男、および子々・勝・和の三女は、江以外の女性からの出生である。
●困ると史料が見つかる(250頁)
いつかは江の評伝をまとめてみたいと思っていたので、夏休みに入ると史料探しを始めた。そんな中、そうした目的とは全く別の調査で訪れた鳥取県立博物館で、請求した史料を待つ間に開架式書棚にあった史料を無意識に手に取った。それが佐治氏の由緒書であり、佐治一成と江の関係を考え直す突破口となる史料となった。その後も困ると、何故か驚くような史料が見つかり、目に見えない力に導かれて原稿を書き進めることができたように思う。

☆関連図書(既読)
「春日局」童門冬ニ著、知的生きかた文庫、1988.06.10
「保科正之」中村彰彦著、中公新書、1995.01.25
「葵 徳川三代(上)」ジェームス三木著、日本放送出版協会、1999.12.10
「葵 徳川三代(中)」ジェームス三木著、日本放送出版協会、2000.03.25
「葵 徳川三代(下)」ジェームス三木著、日本放送出版協会、2000.07.20
(2011年1月13日・記)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 江とその周辺
感想投稿日 : 2011年1月12日
読了日 : 2011年1月6日
本棚登録日 : 2011年1月4日

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