東方見聞録 (現代教養文庫 656)

  • 社会思想社 (1969年4月30日発売)
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感想 : 7
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(2015.12.24読了)(2003.07.21購入)(1997.01.05・第63刷)
歴史上あまりにも有名な本でありながら、読んだことがないのでいつか読もうと思っていたのですが、なかなか手が出ませんでした。図書館で見つけた長澤訳の本が読みやすそうだったので、借りて読みました。
「東方見聞録」マルコ・ポーロ述・長澤和俊訳、小学館、1996.01.20
長澤訳の本を読んで終わりにするはずだったのですが、全訳ではなく、長澤さんによってかなり整理されて、重複している部分や伝聞による部分が割愛され、さらに長澤さんの現地調査の結果が追加されているので、原型とは別のものになっているのではないかと思われたので、手持ちの文庫本も読んでみることにしました。文庫本も全訳ではありませんが、原型により近いものと思われます。

【目次】
序説
第一章 小アルメニアから上都開平府のフビライ・ハーンの宮廷にいたる
    旅行中に見聞した諸国のこと
第二章 フビライ・ハーン、その宮廷と首都
第三章 カタイの西部および西南部への旅
第四章 カタイの南部とマンジへの旅
第五章 日本、南海諸島、南インド、インド洋の沿岸及び諸島
第六章 タタールの君主の間の戦争と北方諸国のこと
解説

●バダフシャン(39頁)
バダフシャンの住民はイスラム教徒で、固有の言葉をもっている。大きな王国で、王位は世襲である。王族はいずれもアレクサンダー大王とダリウスの娘との間の子孫で、すべての王はサラセン語でズルカルニアインと称しているが、これはアレクサンダー大王と同じ意味で、大王をしのんでこうよぶのである。
●ヤルカンド(45頁)
ヤルカンドは五日行程だけつづく地方である。木綿を多く産する。イスラム教徒もいるが、ネストリウス派やヤコブ派のキリスト教徒もいる。いずれも工匠だが、大部分は足がはれている。飲料水によるものらしい。
●オンギラート族(79頁)
タタール人の中にオンギラート族という、美人で有名な種族がある。毎年この種族から百人の美しい娘が大ハーンのもとに送られ、彼はその選択を宮廷の貴婦人たちにまかせる。貴婦人たちは娘たちといっしょに寝て、呼吸が臭くないか、いびきをかかないか、四肢が健全かどうかを調べる。すべて満点だと保証されたものは、順番に皇帝に侍ることになる。
●イスラム教(97頁)
イスラム教の教えでは、教徒以外のものに対してはどんなことをしても、人を殺しても、罪にはならない。
●駅伝制度(101頁)
駅の中間には五キロごとに約四十戸の小さな村が設けられ、そこに大ハーンの飛脚をつとめる人がすんでいる。飛脚は幅のひろい帯をしめ、これに鈴をさげるから、彼らが村から村へ五キロ走るときには鈴の音が遠くからきこえる。次の村につくと、すでに代わりのものが同じ仕度で駆け出す用意をしていて、もってきた書状を受け取り、駅舎の書記から一枚の紙をもらって走り出し、次の駅に行く。
●並樹(103頁)
大ハーンは使節や人民の通る公道には二、三十メートルおきに大木をうえるように命じた。こうすれば、はるか先まで樹木が見え、道に迷わない。無人の地を行く道路にも並木があって、旅行者のよい慰めになる。
●十二支(106頁)
タタール人は十二年を一期として年を計算する。この十二年には、第一年は、ライオン、第二年は牛、第三年は竜、第四年は犬、というように、それぞれ名がつけられている。
●チパング島(166頁)
チパング島の支配者の豪華な宮殿について述べよう。ヨーロッパの教会堂の屋根が鉛でふかれているように、宮殿の屋根はすべて黄金でふかれており、その価格はとても評価できない。宮殿内の道路や部屋の床は、板石のように、四センチの厚さの純金の板を敷き詰めている。窓さえ黄金でできているのだから、この宮殿の豪華さは、全く想像の範囲を超えているのだ。

☆関連図書(既読)
「東方見聞録」マルコ・ポーロ述・長澤和俊訳、小学館、1996.01.20
「ジンギスカン」小林高四郎著、岩波新書、1960.02.17
「小説 マルコポー口」陳舜臣著、文春文庫、1983.04.25
「蒼き狼」井上靖著、新潮文庫、1954.06.
「敦煌」井上靖著、新潮文庫、1965.06.30
「蒙古襲来(上)」山田智彦著、角川文庫、1991.06.10
「蒙古襲来(中)」山田智彦著、角川文庫、1991.07.10
「蒙古襲来(下)」山田智彦著、角川文庫、1991.08.10
「蒙古襲来(上)」網野善彦著、小学館ライブラリー、1992.06.20
「蒙古襲来(下)」網野善彦著、小学館ライブラリー、1992.06.20
「蒙古来たる(上)」海音寺潮五郎著、文春文庫、2000.09.01
「蒙古来たる(下)」海音寺潮五郎著、文春文庫、2000.09.01
「「蒙古襲来絵詞」を読む」大倉隆二著、海鳥社、2007.01.15
「青嵐の譜」天野純希著、集英社、2009.08.10
(2016年5月24日・記)
(表紙から)
日本を「チパング」の名でヨーロッパにはじめて紹介したのはマルコ・ポーロであった。極東についてほとんど何も知らなかった中世のヨーロッパ人にアジアのいろいろな知識を豊富に与え、アジアへの眼をひらかしめた。
その旅行記『東方見聞録』は珍しい記録と奇想天外な話題に満ちあふれ、今なお読者を飽かせない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 世界史
感想投稿日 : 2016年5月24日
読了日 : 2015年12月24日
本棚登録日 : 2015年12月20日

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