夢を持ち続けよう! ノーベル賞 根岸英一のメッセージ

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  • 共同通信社 (2010年12月11日発売)
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(2011.03.05読了)(2011.02.16借入)
2010年のノーベル化学賞受賞者、根岸英一さんの自伝です。ずいぶん素早い出版でしたね。
章立ては、以下の通りです。
第1章、夢をかなえた朝
第2章、ブロークンイングリッシュでいいじゃないか
第3章、幼少期~学生時代
第4章、大学時代、そして社会へ
第5章、再びアメリカへ
第6章、研究者として
第7章、大学での日々
第8章、科学の未来を育てる
第9章、ライフスタイルも追求型
第10章、豊かな人生にするために

中国の旧満州長春で生まれ、日本の敗戦で引き揚げてきて、日本で暮らし、大学を卒業した後は、帝人に入社し、帝人を休職して、フルブライト奨学生として、アメリカに留学し、一度帰国した後、再びアメリカで研究生活に入り、そのままアメリカ暮らしと言うことなので、日本暮らしは、15年ぐらいではないでしょうか?
一旦大学から民間に出てしまったら、日本の大学システムでは、日本の大学の研究者になることは、難しいようです。根岸さんも何度か日本の大学に戻ることを検討したけど、無理と判断し、断念したようです。
それはともあれ、優秀な方ですね。競争率がどれだけあっても、必ず選ばれているようです。ノーベル賞にも選ばれたわけですし。趣味は、音楽と言うか、合唱のようです。

●能力とは(32頁)
羽生善治さんは「能力ってなんですか?」という問いに「好きなことを続けられるというのが能力です」と答えていました。
適性がないのに一生懸命やろうとしても、長続きしません。
●電気工学か応用化学か(52頁)
電気工学が第一志望でした。そのころ電気工学は一番人気の学部でした。人気があり、競争率の高いところがあればチャレンジしてみたくなる。
それがあるとき突然、応用化学に変わってしまいました。当時は石油化学が花形産業で、そこから化学繊維業界も注目されていました。
すみれとの結婚を意識していたので、そうなったのかもしれません。
●化学と幾何学(55頁)
化学には数学の代数のような部分だけでなく、幾何のようなところがあります。私は幾何学と化学に、むしろ共通点を感じます。幾何学は図を目で見て考える。化学も構造式を書いたりする。そういうところが、私の脳に向いているのではないかという気がします。
●恩師から学んだこと(69頁)
ブラウン先生から習った一番のポイントは、発見の芽が出てきたとき、どうやってそれを大木に育てるかということです。その芽から出てくるいろいろな可能性を網羅的かつシステマチックに追及する、その姿勢が非常にロジカルでヤマ勘みたいなものは入れません。「重要なのは、今何が起こっているかを正確に調べることだ」
●毒性のものは駄目(92頁)
わたしは「ベリリウムで仕事をしないか」と言われたことがありますが断りました。ベリリウムは非常に軽いので、それを吸うとかなり身体を侵されるらしいのです。どういうふうに使っても毒がありますから、私は残念ながらお断りしました。
カドミウムや鉛も駄目です。

☆関連図書(既読)
「化学者たちの感動の瞬間」有機合成化学協会編、化学同人、2006.12.25
「鈴木章ノーベル化学賞への道」北海道大学CoSTEP著、北海道大学出版会、2011.01.25
(2011年3月6日・記)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 物理・化学
感想投稿日 : 2011年3月6日
読了日 : 2011年3月5日
本棚登録日 : 2011年3月4日

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