ストーナー

  • 作品社 (2014年9月28日発売)
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本棚登録 : 2583
感想 : 206
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「この本については特に誰とも語り合いたくない」と中野善夫さんがつぶやいていらした。

 この作品はおそらく、翻訳で命を削ってきた翻訳者に、翻訳の神様がねぎらいの意を込めて贈呈して宝だろう。でなければ、どうして最後の一ページを残して天に召されるだろう。

 自分は書評というものを大変頼みにしていて、書評によって、より輝き、深みを増す作品があると信じている。しかし、この作品にかぎって書評は不要だと思い、好きな部分の抜き書きにとどめる。

「六十の峠が近づいた今、自分にはもはやあのような情熱の力、愛の力は残っていないのではないかと思った。いや、ちがう。これからも決して失うことはない。無感覚と無関心と退避の日常の中でも、その力は強く内在していた。昔からずっとあった。青年時代には、やみくもに、考えもなく、それを行使した……人生の一瞬一瞬すべてにそれを行使し、そう意識しないときにこそ最大限に行使してきたのかもしれない」
「ふいに、自分が何者たるか覚り、その力を感じた。わたしはわたしだ。自分がどういう人間であったかがわかった」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年1月25日
読了日 : 2016年1月25日
本棚登録日 : 2016年1月25日

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コメント 4件

kwosaさんのコメント
2016/01/25

「ストーナー」読みました。

中野善夫さんのつぶやきや、
>しかし、この作品にかぎって書評は不要だと思い、
とのnanaestさんの言葉に同意します。

勢い思わずコメントしました。
失礼しました。

nanaestさんのコメント
2016/01/26

kwosaさん、コメントをありがとうございました。わたくしもkwosaさんの感想を拝見しました。「書評やいろんな方の感想を目にして『ああ、こういう話なのね』とわかった気にならず」と書かれているのを見て、ああ、同じ思いの方がいるのだとうれしくなりました。じつは、このような場で自分の思いを表出するのは初めてなのですが、同じ作品を読まれた方とこんなふうに気軽にふれあえる場は貴重だなとあらためて思いました。

kwosaさんのコメント
2016/01/26

nanaestさん、こちらこそコメントをありがとうございます。
僕自身も、読んだ方だけにわかる思いを共有できていることをうれしく思っています。
本当にこういう場は貴重ですね。

natsu33emikoさんのコメント
2016/05/05

私も同じ個所をノートに抜書きしました。それをお伝えしたくて、今、ブクログに登録しました(^^)

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