「この本については特に誰とも語り合いたくない」と中野善夫さんがつぶやいていらした。
この作品はおそらく、翻訳で命を削ってきた翻訳者に、翻訳の神様がねぎらいの意を込めて贈呈して宝だろう。でなければ、どうして最後の一ページを残して天に召されるだろう。
自分は書評というものを大変頼みにしていて、書評によって、より輝き、深みを増す作品があると信じている。しかし、この作品にかぎって書評は不要だと思い、好きな部分の抜き書きにとどめる。
「六十の峠が近づいた今、自分にはもはやあのような情熱の力、愛の力は残っていないのではないかと思った。いや、ちがう。これからも決して失うことはない。無感覚と無関心と退避の日常の中でも、その力は強く内在していた。昔からずっとあった。青年時代には、やみくもに、考えもなく、それを行使した……人生の一瞬一瞬すべてにそれを行使し、そう意識しないときにこそ最大限に行使してきたのかもしれない」
「ふいに、自分が何者たるか覚り、その力を感じた。わたしはわたしだ。自分がどういう人間であったかがわかった」
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年1月25日
- 読了日 : 2016年1月25日
- 本棚登録日 : 2016年1月25日
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コメント 4件
kwosaさんのコメント
2016/01/25
nanaestさんのコメント
2016/01/26
kwosaさんのコメント
2016/01/26
natsu33emikoさんのコメント
2016/05/05