デカルトの密室

著者 :
  • 新潮社 (2005年8月30日発売)
3.20
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本棚登録 : 266
感想 : 50
5

まさかの一か月ぶりの更新です。

完全に瀬名秀明作品にやられましたよ……一冊を読了するのにこれだけ時間が取られるとは……。
まぁ、仕事に追われていたので時間が割けなかったのも多分にあるのですが、それでも10時間くらいは割いたのではなかろうかと思います。
原因としては、瀬名さん独特の、普通に読んでいては深ーい内容への理解が進まない小説であることが挙げられます。
2作目の『BRAIN VALLEY』からすでに兆候は出ているのですが(ちなみにこの作品は僕の中で上下巻の面白さの格差が最も激しいものとして記憶されています)、とにかく序盤から中盤にかけては、その作品のテーマに関する知識を「これでもか!」と見せつけられていく展開が続きます。しかも、そこで「あぁ、難しい理論とか苦手だから、この辺は読み飛ばすか」なんてことをしてしまった日には、中盤以降も話の展開が理解できずに、面白さを感じられないまま終わってしまいます。瀬名さんの作品の序盤の難解さは、終盤の面白さへの必要悪なんです。それがすごく厄介なんですが、一度そこにハマると、なかなか抜け出せなくなりますよ。

さて、今作は哲学とロボット工学を絡めた、『自意識のあり方』が全体的なテーマとなっています。
そもそも人間には『自意識』というものがあり(われは思う、ゆえにわれあり、みたいなやつです)、その仕組みをプログラミング化することは、ロボットを人間に近づけていくためには、近い将来、避けては通れなくなるものです。
しかし、『自意識』というものはそもそも個人個人にあるものなので、一個の人間が他の何かにそれを植え付けさせることは可能なのでしょうか。仮に植え付けたとしても、それはロボットの『自意識』ではなく、それを植え付けてあげた人間の『自意識』のコピーではないのでしょうか。
そこをクリアするために、主人公は自分が作ったロボットと、真摯に向き合っていきます。ですが、そこに現れたのは、ロボットに『自意識』を持たせるのではなく、人間の『自意識』を閉じ込められた論理―「デカルトの密室」から解放することで、新たなロボット時代を作ろうとする者たち。
主人公と彼のロボットは、ある事件をきっかけにそいつらに立ち向かっていくことになります。果たしてその結末は――。
みたいなのが、大体の筋です。どうです? 面白そうではないですか?
でも、実際は理論で固められているシーンが多く、相当読み疲れていきますよ……。時間に余裕のある方だけ、ぜひチャレンジしてみてください。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説‐現代小説
感想投稿日 : 2012年9月27日
読了日 : 2012年2月13日
本棚登録日 : 2012年9月27日

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