社会のなかでの自分の居場所を模索し始めた、少女たちの物語。
ある者は身につける物や周りに置く友人で自分の場所を保とうとし、それができない者は独自の価値基準で人を値ぶみする。誰もしたことがない経験によって自分を特別にしようとする者もいる。
みな、自分の場所を探しているだけなのだ。
子供の頃に抱いた「世界の中心は自分なのだ」というあの万能感を、証明しようとしているだけ。
なのにこんなにも、不器用で、苦しくて、うまくいかない。
この小説は、そんな自我の模索に苦しむ少女たちの物語だ。少女期に抱きやすい劣等感や葛藤をとても上手に描いていると思う。
私が特に好きなのは、第3話——読書好きの地味な保田と、クラスで一番派手な恭子さんの一夏の交流の物語だ。
恭子さんは自分の価値を、自分の持ち物(容姿・彼氏・友人など)で保っているけれど、保田は自分の価値を決めることには興味を持たず、好きなものに対してまっすぐだ。
恭子さんはそんな保田に惹かれていくのだけれど、結局「人の目」を気にすることをやめられない。
この話を読んで、「桐島、部活やめるってよ」を思い出した。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2016年11月13日
- 読了日 : 2016年11月13日
- 本棚登録日 : 2016年11月13日
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