夢野久作の恨みつらみ妄想を重ねた短歌に、繊細で美しいけれど何か怖い様なグロい様な「不安」を覚える絵が交じる。
夢野は短歌の中で「死にたい」「殺す」としきりに言ったり“気違い”と自称してアハハハハと笑ったりするけれど、きっと口だけなのだろう。
そんな自分を顧みて、「馬鹿………」と諦めた様に呟いているのが作者の真の姿だと思う。
編者によるピックアップと章立て、巻頭・巻末のエッセイは無い方が良かった。
全部の歌を収録して、夢野の短歌のドロドロのみで圧倒させて欲しかった所。
でも、巻末で編者が述べているこの本の性質はその通り。
“歌に詠まれた人々は、私らと変わらぬ孤独な心を持っている。他者との繋がりを求めては切り捨てるを繰り返す、矛盾した心だ。他者とは交われぬと自ら境界線を引いた心だ。隔離は暗部を優しく育てる。そして緩やかにタガが外れる時を待つ。(p.123)”
“危なっかしいが、その境界線を越えない節度こそ甘美(p.124)”
とにかく、この甘美な毒にかなり掴まれて惹き込まれた!
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格差、貧困、差別、抑圧の時代に夢野久作の<怨嗟の言葉>が、よみがえる!
独特の美学で注目を集める気鋭の作・演出家、赤澤ムックの手により掬いとられた数々の言葉(うた)。
夢野久作の短歌「猟奇歌」より百十六首を選び、章毎にほのかな物語を感じさせるために、八つの章に分類。巻頭と巻末にはエッセイを加え、さらに、美術家・重野克明の作品を配し、再構成しました。赤澤ムックの手により、新たな「猟奇歌」が誕生しました。
- 感想投稿日 : 2010年11月28日
- 読了日 : 2010年11月27日
- 本棚登録日 : 2010年11月27日
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