生きるぼくら (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店 (2015年9月4日発売)
4.19
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感想 : 1038
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積ん読チャレンジ(〜'17/06/11) 27/56
’16/12/22 了

『本日は、お日柄も良く』を勧めてくれた友人が一緒に勧めてくれた作品。
電車での通勤時間を睡眠に充てることも多々あるが、続きが楽しみすぎて電車の中で眠るのも忘れてずっとのめり込んでしまった。

酷い苛めから引きこもりとなってしまった主人公が田舎での生活を経て社会的に成功していく……
などという結びではなく、彼の行動によってもたらされた変化が大変ミクロである点も良かった。

しかし、影響を与えた人数や範囲が僅かなものであっても、そのただ中にいる人にとってその変化は大変大きなものであり、「人間が周囲に与えられる変化ってこういうものだよな」と思わされた。

多分に小説的な演出によって登場人物が動かされている感じは否めないものの、キャラクターが自分で動いている感じがして小気味良かった。

母子家庭でそだった主人公・人生(じんせい)にとって、追憶の中に忘れられた存在とも言える父親が、物語の後半に行くに従って重要度を増していく展開が見事。

人間は誰かの助けを得、自然から多くの物を頂いて生きているのだということを、「米作り」というテーマに仮託して説教臭くなく爽やかに伝えきる語り口も大変鮮やか。

『本日は、お日柄も良く』と合わせ、すっかり作者のファンになってしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年12月26日
読了日 : 2016年12月26日
本棚登録日 : 2016年12月26日

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