鬼ぞろぞろ (赤羽末吉の絵本)

著者 :
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う~ん、これも面白い!
【今は昔のこと。】で始まる、中世説話文学の最高峰と言われる「今昔物語」の中のお話(巻十六の三十二話)を、絵本化したもの。
舟崎克彦さんと赤羽末吉さんというと、以前こちらで紹介した「日本の神話」のコンビでもある。
歯切れの良い文章と、味わい深い挿絵は相変わらずで、鬼は最初にしか登場しないが、その迫力も見所のひとつだ。

鬼に唾を吐きかけられたために透明人間になった男は、はじめのうちこそ元の姿に戻りたいと観音様にお祈りするが、そのうちに悪心が芽生えてしまう。
このあたりを読むと、「易きに流れる」のが人の常かと情けなかったりもするが、その業の深さがユーモラスでもある。
ひとたび悪心に取り付かれてしまうと、そこから自力ではい出すのがいかに困難か、読むとよ~く分かる。
いよいよというところで良心に目覚めてくれたので、「心の中の鬼退治」とでも言えば良いのだろうか。

ところで、海外のひとに「鬼」を説明しようとすると、案外手こずる。
それは男か、女か、複数の時は[s]を付けるのかどうか。demonとは違うのか。
いえいえ、自分の心の中の悪いところが、形になると鬼のようなんですよ、と言っても、相手はますます???という様相。
げに恐ろしきは人の心なり。
この男、鬼よりも恐ろしいではないか。

透明になった男は、赤一色で表現されている。
俯瞰した絵は絵巻物を見るようで、ちょうど物語の場である京都は、今祇園祭の真っ最中。
鬼がぞろぞろいた昔は、「鬼がまだ威勢が良かった頃」であり、一度は逢ってみたかったいう気持ちにもさせる。
約10分。これも【鬼が出た】を先にカンニングすることをお薦めします(笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本・通年
感想投稿日 : 2013年7月12日
読了日 : 2013年7月12日
本棚登録日 : 2013年7月12日

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