翻訳できない世界のことば

  • 創元社 (2016年4月11日発売)
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本棚登録 : 6421
感想 : 509
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読んでいてとても楽しい、魅力的な本。
イラストレーターでもある著者が若い女性のせいか、どちらかと言うと情感豊かな言葉に偏った気もするが、それでも楽しい。
翻訳できない言葉の奥に、その国の歴史や文化が垣間見えてくるし、その言葉を使う人々の暮らしに想像を巡らすという楽しみもある。
その上、手描きの文字とイラストが暖色系で可愛らしい。
イヌイットの棲み処である「イグルー」も、この著者の手にかかると妙に可愛い。

日本語からは【木漏れ日】【ボケっと】【侘び寂び】【積読】がチョイスされ、
その説明には舌を巻いた。
いやぁ、侘び寂びをこんな風に解釈したことがなかったな。
【生と死の自然のサイクルを受け入れ、不完全さの中にある美を見出すこと】
ですと。・・しかも、読むとそんな気になってくるし・(笑)

ブラジルには【愛する人の髪にそっと指を通すしぐさ】を名付ける【カフネ】という名詞があるという。なんと官能的な!ああ、クラクラしてくる。
アルコール好きな国民が目に浮かぶ、【ウィスキーを一口飲む前に、上唇に感じる妙なムズムズする感じ】を表す【スグリーブ】というゲール語もあるのが笑える。

同じく笑ったものは、マレー語の【ピサンサブラ】。
これは、バナナを食べる時の所要時間であるらしい。大体2分だと言う。
アラビア語の【グルファ】は【片方の手のひらに乗せられるだけの水の量】だと言うから、灼熱の地でその貴重な水で喉を潤す人が見えてきそうだ。

傍らに置いてつれづれにページを開き、開いたところを読んで何度も楽しめる。
イラストの日本語の文字に誤字が多いのが玉にキズ。
言葉を扱った本なのだから、もう少し丁寧な編集が欲しかった。。

それでも素敵な一冊だから、友人の誕生日プレゼントにしようかと考え中だ。
最初と最後に寄せられた著者からのメッセージも、慎ましくてとても素敵。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年5月14日
読了日 : -
本棚登録日 : 2017年5月14日

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コメント 4件

あいさんのコメント
2017/05/16

こんばんは(^-^)/

素敵な表紙ですよね〜♪
読みたいと思っていました。
ちょっと難しいのかなと思っています。
友達にプレゼントしたくなるほどなんですね。
それは素敵だなぁ。

nejidonさんのコメント
2017/05/18

けいたんさん、こんにちは(^^♪
コメントありがとうございます!

そうなのです、表紙も素敵なのですが中身も素敵なのですよ。
難しさは感じません。そこはご安心くださいませ。
ストーリーはないので、開いた場所から読んで楽しめます。
著者による説明文がとても詩的です。翻訳が良いのかな。
イラストも可愛いですよ。その意味では女性向けかもしれませんね。
ぜひぜひけいたんさんにもおすすめです!

アセロラさんのコメント
2017/05/21

こんにちは♪
「積読」がどう表現されているのかが気になります(笑)同じような事をしている読書家は古今東西いると思うのですが(笑)

「ピサンサブラ」はバナナを食べる時の所要時間!
こういう概念はネイティブじゃないと難しいでしょうね~。
でも、だからこそ、興味深い。
日本で言うと、カップラーメンの出来上がる時間やウルトラマンが地球にいられる時間=3分。というところでしょうか。
こういう常識も、別に学校で習った訳では無いのに、気が付けば普通に常識として備わっていて、たいていの人とは話が通じるのですから不思議ですね。

nejidonさんのコメント
2017/05/23

アセロラさん、こんにちは♪ コメントありがとうございます!
たくさんのお気に入りをくださって、ご近所でしたらお礼に何か差し上げたいくらいです(笑)

「積読」という言葉のチョイスが意外で楽しいですよね。
日本以外には無いということも面白さ倍増です。
『買ってきた本を、他のまだ読んでいない本と一緒に読まずに積んでおくこと」だそうです。
そうそう、こういうこと世界中の本好きさんがやっていそうです!
「ピサンサブラ」もそうですが、その国の暮らしぶりが見えて来そうで、そこが楽しいのです。
果たして「積読」で、他国のひとたちはどんな日本を想像したことやら、です。
もともとはネット記事だったものが大人気となり、書籍化されたそうですよ。
世界中に素敵な言葉がたくさんあり、それを味わうことが出来る一冊です。
機会がありましたら、ぜひアセロラさんも手に取ってみてくださいませ。

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