選ばれるほうにドラマがあるように、選ぶほうにもドラマがある。
些細なことから意外なことまで、彼女自身の言葉で綴られるコンクールの舞台裏。
時々軽妙だったり、時々憂えたり。流れるように、或いはテンポの緩急をつけて。音楽そのもののようでもある。
「 例えば極端に乱暴で大雑把な言い方になるが、クラシックの演奏家、特にピアニストは、要するに他に面白いことがいっぱいある社会では成熟しにくいのではあるまいか、と私はかねがね考えてきた。経済的にも豊かで、多元的な価値観のもの、文化的にも技術的にも次々と新しい知的冒険と刺激が生まれ、多様なライフスタイルが試みられる社会では、長時間に亘る持続的で精妙な鍛錬を必要とするピアニストの育つ土壌は極めて限られるのではないか。」というのは少々意外。
音楽、とりわけクラシック音楽の教育は、どちらかというと裕福な良家で受け継がれてきたもの、という印象があるからだ。
単純に言って、あまり裕福でなく、選択肢のないほうがいいということ?
それってクラシック音楽に限らず、ポップミュージックでもスポーツでも言えることなのではないか。。。
26年前のエッセイなのに、古さは感じない。
課題も明確に提示されている。
良書だと思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
音楽は流れる
- 感想投稿日 : 2012年4月4日
- 読了日 : 2012年4月4日
- 本棚登録日 : 2012年4月4日
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