これは楽しい!「牛を屠る」が面白かったので、タイトルにもひかれて読む気になった。肩肘張らない書き方で、すんなり読んでいける。「おれのおばさん」シリーズ作者による「主夫生活のすすめ」はとても具体的で、実践の中から出てくる言葉がしみじみあたたかい。
小学校の先生である妻と二人の息子、四人家族の家事をほとんどすべてやってきたのだそうだ。時には同じ敷地内に住む奥さんのご両親にもごはんを持っていくという。その姿は、ほんとにありふれたごく普通の「主婦」と同じ。そこがいいなあと思う。
「男のナントカ」的にあれこれ能書きを垂れるのでなく、家事を煩わしいものとして「合理化」のワザを語るのでもなく、「丁寧でエコな暮らし」を提案するのでもない。家族が機嫌良く暮らしていくために、必要なこととして家事をする。考え方として、また行動として、このシンプルさが基本にあるところが実に良いのだ。
そしてまた、子育てについても、なるほどなあと思うことがいろいろ書かれている。世のフツーのおとうさん方と違って、子供に関わる時間が圧倒的に多い(PTAも長期休みの相手も担当)著者が、どういう思いで子育てをしてきたかが随所で出てくる。わたしが一番「そうだよね~~~」と思ったのは、「主夫のお悩み相談室」の次のところ。
Q 子どもがぐうたらしてばかりで将来が不安です。どう言えばやる気を出すでしょう?
A 可愛い子にはぐうたらさせよ! 嫌でもがんばらなくてはならないときは来ます。小学3、4年生ぐらいまでは、圧倒的にのんびりした時間を過ごさせよう。( 中略 )子どもの頃にたっぷり休み、学生のころは好きなことをしてさんざん親に心配かけた経験が、大人になって効いてきます。自分が親になったときに、「今度は自分が子どもの世話をする番だ」と受け入れることができる。
いやほんと、わたしなんかまさにこれだなあ。何をするでもなくのんきに過ごしていた子どもの頃や、いっぱしにものを考えてるつもりで好き勝手してた学生時代。ああ恥ずかしいと思ってきたけれど、あれがあってこその今なのだと、なんだかとても胸に落ちるものがあったのでした。別のところの次のくだりにも深ーく共感した。
「大人になってからつくづくおもうのは、子どものころは実にのん気にしていたということで、息子たちにもその気分を味わわせてやりたくて、わたしは日夜家事と仕事に奮闘しているのである」
サラリと語られる経歴からも、真面目だけれど妙なこだわりのない著者の人となりが伝わってくる。この本のもとは北海道新聞での連載で、東京生まれの著者と北海道を固く結びつけたのが、北大恵迪尞での「組んずほぐれつの生活」らしい。恵迪尞を舞台にした小説もあるようなので、読んでみたい。
- 感想投稿日 : 2015年5月12日
- 読了日 : 2015年5月12日
- 本棚登録日 : 2015年5月12日
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