舞台は瀬戸内海に浮かぶ冴島。
本土までフェリーで20分のところにある。
この島に住む4人の高校生たち。
明るく、素直で、人が寂しさや辛さを抱えているのをほっておけない朱里。
美人で、少し冷めたところのある、衣花。網本の一人娘であるが故、島から出ることはできないとあきらめにも似た気持ちを抱えている。
子どもの頃に移り住んできた、少々不良っぽい、源樹。
演劇に対する深い思いを持ちながら、フェリーの時間の制約のために部活動に打ち込むことができない新。
島と本土とを隔てる海によって、島の生活は一見穏やかに守られているように見える。けれど海は、高校を卒業してこの島を出て行った者と残った者との間をその距離以上に隔てているようだ。
母親が経験した友人との思わぬ別れによる寂しさを、祖母には味わってほしくないと朱里は奔走する。人が抱える辛さを思いやることができる彼女は、本土における別れ以上に、島から出ていく人との心理的な距離を敏感に感じている。島を取り巻く自然環境や特有の生活環境が高校生の彼らを少しばかり早く大人にさせるようだ。
海がなくても、距離が遠くなくても、会わずにいる人が何人もいる。年賀状に書かれたコメントへの返事を次の年の年賀状に書いたりして。
『会いたいね』ではなく、せめて今年は『会おうよ!』と書いてみようかなあ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2013年7月22日
- 読了日 : 2013年7月21日
- 本棚登録日 : 2013年7月21日
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