アンリ・ルソーの幻の名画を前に、2人のキュレーターがその真贋について判断を下す。
どちらの評価が正しいのか?
真実はどこにあるのか?
1983年、スイスのバーゼルのコレクター、バイラーに招待され
ティムはニューヨークから、織江はパリからバイラーの屋敷に向かう。
そこには、アンリ・ルソーの「夢」によく似た構図の作品が飾られていた。
1日1章ずつ物語を読み、7日間かけて判断をせよと、バイラーは言う。
果たして、その絵は真作なのか贋作なのか?
物語は誰によって書かれたのか?内容はフィクションなのか?
ティムに、なんとしても勝利をし、作品に関わる権利を手に入れよと、
複数の人間がコンタクトしてくる。
彼らは敵か、味方か?
目的は何なのか?
織江はどういう立場の人間なのか?
ティムの目線で語られるシーンが多いが、誰もが怪しく、
追い詰められるようで、ミステリーの要素もたっぷり。
キュレーターとして、活躍していたマハさん。
お気に入りの画家はルソーらしい。
そのせいか、読んでいると
ルソーに、芸術に、キュレーターという仕事に対する情熱が行間から窺える。
実に「濃い」作品になっていて、読む側にも気合が満ちてくるような気がした。
歴史とドラマ、事実と創作の境目がさっぱりわからず、混ぜこぜになって信じてしまい、
後々違う解釈を見て驚いたり、がっかりしたりの私。
今も「八重の桜」で松平容保@綾野剛クンに入れ込んで、苦しさの真っただ中にいる。
それでも、このお話のようなルソーに愛情を傾ける人たちによって、
芸術が受け継がれていくのなら、幸せだと思う。
その周りの人も愛情を注いだ分だけ、神様からご褒美を頂けるような
少しばかりの美しい真実に出会えたら、なおいいな。
史実にしても、身の回りの出来事にしても、
結局はある方向からの目線により語られるものであって、
たくさんの線を引いてなぞっても、完璧に再現できるかというと難しい。
真実とか、本当の思いとかって、どこにあるのでしょうね。
世間を騒がす歴史ネタも、昨日のケンカの理由も
すべてを明らかにしたいような、したくないような・・・。
だからこそ、小説になる余地があるわけで
まぁ、それを存分に楽しむのがよさそうです。
- 感想投稿日 : 2013年6月5日
- 読了日 : 2013年6月4日
- 本棚登録日 : 2013年6月4日
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