明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち

著者 :
  • 幻冬舎 (2013年2月27日発売)
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本棚登録 : 1380
感想 : 210
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先日終わったソチオリンピック。
ヨーロッパでの開催だと、なかなかライブ映像を楽しむのは難しかった。
録画して見ると、民放の番組の前半は感動的な取材映像で埋め尽くされ、背中に背負うストーリーでお腹がいっぱいに・・・。
確かに葛西選手の今までのオリンピックシーンや新聞の記事くらいは興味深く見ているけれど、真央ちゃんや高橋大輔くん、弓弦くんの取材映像を見ていると、今回のオリンピックは以前にもまして過剰になっていた気がした。
彼らの競技だけに没頭できる環境を静観できるいいのだけど、マスコミに取り上げられるのもある種仕事だと思えばバランスが大事というところか。

で、この本。
ステップファミリーのたいへん魅力的な長男(ちょっとしたしぐさや行動が人を惹き付けずにはおかない!)が不慮の事故で亡くなってしまう。
溺愛していた息子を失った母親は精神的に大きなダメージを受けアルコールに依存症に。
母親の精神的なバランスをぎりぎり保とうと家族は全力を尽くすのだが・・・。
母親が実の兄を溺愛していたのを客観的に眺めながら何事にも踏み込めない長女。
兄に向けられていた血のつながらない母親の愛情を今こそ、手に入れようとする次男。
血縁のうえで両親を繋ぐ次女は、兄と過ごした時間が短かったにもかかわらず、学校や家庭に兄が遺した思い出に絡め取られそうになりながら、反発し、苦しんでいる。

ギリギリのバランスの上に成り立つ家族。
はた目から見ていると、母親がこれ以上壊れないように子ども達が自分を殺し我慢を重ねて成立しているのがわかる。
自分が自分らしく生きようとすることは、この家族を離脱し、自分というピースを取り去ることになり、バランスが崩壊することを意味すると考えている。

人のために生きることで、自分は今まで以上に強くなれたと感じる人がいる。
何もかもそぎ落として、自分という芯だけを頼りに生きる人もいる。

いろいろな事情に、物語が絡まってしまった家族関係。
苦しいね・・・。
シンプルに居心地のいい、帰ってくる場所としての『家族』とはもはや異なる世界。
そんなことを考えた1冊。
傍観者たちによって、勝手にストーリーを背負わされてしまったオリンピックの競技者たちに対してなんだか申し訳ない気持ちになってしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2014年3月4日
読了日 : 2014年3月3日
本棚登録日 : 2014年3月4日

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