中堅メーカー・東京建電でやり手の課長の坂戸が、万年係長の八角からパワハラで社内委員会に訴えられる。
ろくに仕事をしているとは思えない八角の訴えは、取り上げられないだろうとの大半の予想とは異なり、更迭された坂戸。
坂戸のあとを任された原島は、この裁定に納得のいかず八角を問いただす。「知らないでいる権利」もあると言う八角から、その裏に隠された事実を聞き、「知ってしまった責任」を果たすことになる。
子どものとき、父親が会社でどのように働いているかについて、
考えたこともなかった。何の仕事をしているかについて、詳しく訊ねる事もなかった。
ただ社会科の宿題で勤務先の会社について、質問したことはあった。
自分の仕事に対する自負のようなものがあったのか、その後、会社が社員に渡していたダイアリーをくれたのだった。
きれいな写真が添えられたカレンダーやら、国内にある工場や営業所の描かれた地図。会社の沿革。ビジネスに関するページ。
厚めのなめらかな紙を使ったそれは、子供心にとてもきれいで、眺めているのは楽しかった。興味は長続きはしなかったけれど。
「働く」とは、どういうことなんだろう。
「傍を楽」にすることだと、聞いたことがある。
人の役にたつこと、誠実に仕事をすること。
決して会社に目先の利益をもたらすことではないはずだ。
顧客を裏切り、社員を追いつめ、一部の人間だけが得をするようなやり方がまかり通る企業はいつか綻びが現れると信じたい。
「客を大事にせん商売は滅びる」(P296)
顧客が満足し、働く人が少しでも自分の仕事に対して自負を持てるwin-winの関係というのは、誰もが破たんに追い込まれない目指すべき関係なのではと改めて思う。
「ロズジェネ」シリーズのようにヒーローが出てくるわけではないし、オセロで黒が白にひっくりかえるような鮮やかな解決もない。
起死回生のカードが切られて解決するようにと願いながら、息を詰めながら読んだ。
現実の企業では、どうなんだろう。
- 感想投稿日 : 2013年1月14日
- 読了日 : 2013年1月14日
- 本棚登録日 : 2013年1月14日
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