優しさごっこ (新潮文庫 い 31-1)

著者 :
  • 新潮社 (1987年1月1日発売)
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本棚登録 : 113
感想 : 6
5

日本版「クレーマークレーマー」。
かあさんが出て行った後の 
絵本画家のとうさんと 少女あかりの奮闘2人暮らし物語。

これも小6のときに初めて読みました。
今江祥智さんは、児童文学の草分けの方。
この物語は、今江さんのノンフィクション?と思いながら
それを確認するすべがないまま、20年以上がたちました。

これは 究極の「性善文学」です。
つまり、悪い人が1人も出てこない。
生真面目なとうさんは、それまで包丁も持ったことがなかったのに
育ち盛りのあかりのために、毎日毎日カンペキな料理を作ろうと奮闘しているが
クラッシュ気味。
そんなとき、絵本の弟子入り志願のお兄さんがやってきた。
板前から、絵本作家になりたいという異色の経歴の持ち主の彼は
ひとめでこの家に主婦がいないことを見抜き
「交換授業させてもらえませんか?」といって
台所に入る。
今の時代なら、考えられない人間関係の距離感が これでもかという感じで
この作品の中では、生き生きと温かく表現されています。
あかりととうさんが周りの人に支えられて、大きく成長していくストーリーは
何度読んでも、あたたかく心を打ちます。

私は、好きすぎる本の中の世界とは 必ず人生シンクロする出来事が起こります。
ある日(私が20代になって) たまたま見に行った劇団の舞台に
「今江冬子」さんという女優さんがおられ、この方が あかり のモデルだと
知って驚愕したり、私が結婚式をした「ホテル・ニューグランド」は
とうさんが一度だけ、物語の中でほろにがい恋をした相手と落ち合った場所だった
とあとでわかったりしました。

誠実に謙虚に、そして相手を包み込むような生き方をしているこの作品の登場人物たちは
私の人生の常にお手本です。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 人生で常に傍らにある本
感想投稿日 : 2008年11月20日
本棚登録日 : 2008年11月20日

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