人工知能の核心 (NHK出版新書)

  • NHK出版 (2017年3月10日発売)
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感想 : 27
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数年前まではまだ遠い未来の話だと思っていたAI。私の職場でもワトソンの正解率が会議で進捗報告されるなど、ここにきてぐっと身近になってきた感がある。

プロ棋士として、また、人の頭脳を体現する知性の持ち主として早くから人工知能の研究に協力するなど研究者・経営者たちと折りにふれ交流してきた羽生さんは、人間との違いとして「人工知能には美意識がない」「思考がブラックボックスである」ことを挙げる。
恐怖心を持つことなく過去のデータに基づいた最適解を選ぶ人工知能に、なぜそんな危険な手を選ぶのかと驚く一方で、人が美意識(危険を察知する防衛本能に由来するもの)の中で認識できていない他のところに確度の高い選択肢がある可能性は十分あると羽生さんは言う。
また、人工知能の思考はブラックボックスであり、どういうプロセスを経てその回答に辿り着いたか解明できず推測も難しいことから、人工知能が政治や経済の意思決定に関与するようになった場合には、意思決定の過程がブラックボックスであることに多くの人が不安を覚えるのではないか、その際は政策決定者が人々に分かりやすく説明できるかが重要であるとも語る。

Wikipediaによると、レイ・カーツワイルは2017年3月、シンギュラリティの概念を提唱した2005年当時の予測より技術開発の進捗が早くなっていることから技術的特異点の到来は2029年に早まるとの見解を示すとともに、その際、人間の論理的思考を司る大脳新皮質を人為的に拡張することで、人類がポスト・ヒューマンに進化するというシナリオを提示したとのこと。
やばい。鉄腕アトムとターミネーターをもう一度見なきゃ。

なお、羽生さんは重要な対局の棋譜はプリントアウトして実際に盤面に駒を並べるそうですが、ある程度溜まったらそのプリントは捨てる。そう決めておけば、ここで覚えないともう見られなくなると覚悟を決めて学べるとのこと。たいへん勉強になりました!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: テクノロジーとその周辺
感想投稿日 : 2017年5月13日
読了日 : 2017年5月10日
本棚登録日 : 2017年4月23日

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