カール・ポランニーの人類学者的側面が前面に出た著作。どうやら死後刊行されたものと思われる。
取り上げられているのは18世紀に西アフリカで栄えたダホメ王国で、これはマリノフスキー、モース、レヴィ=ストロースなどが取り上げたような「未開社会」よりもずっと「発展・文明化」された複雑な国家であるようだ。
もちろん現存しない社会であるからフィールドワークでなく、文献を渉猟して詳細に調査している。ポランニーのダホメ描写は社会構造の概略、歴史、そして経済システムを学問的に語ったものなので、ダホメ国民の生活とか具体的なイメージはあまり湧いてこない。
ダホメはどうやらユートピアのような国ではないが、その経済システムは近代西欧がはぐくんだ「市場経済」とはまったく様相が違うものだ。ポランニーの狙いは、その差異を強調することで、西洋的「市場経済」は相対的に特殊なものであり、ある意味では異常なものであるという主張を補完することにあるのだろう。けれども本書は全く真面目な学問書であって、安易な口走りに逸脱することはない。
西洋的「市場経済」というのは、ポランニーによると、それ自体が自律的で自己生成的であり、市場の論理(需要と供給)によって価格は決定し、貨幣の動きに伴って利潤などというものが発生してくる。19世紀から20世紀にかけての西洋型「市場」資本主義の悪夢は、社会構造が市場経済の論理に支配され尽くして、すべてが「要するにカネ」ということになってしまう非人間性にある。
このポランニーの主張には共感する。
けれども本書に描かれたダホメの社会は必ずしも理想的ではないし、さほど魅力も感じられない。もちろん、実際に見たこともない世界だからこれだけで判断はできないのだが。
ポランニーは本書をあくまでアカデミックな目的で書き、それ自体は完遂されている。ポランニー思想のひとつの側面を如実に示す点で、重要な本なのかもしれない。
- 感想投稿日 : 2015年12月23日
- 読了日 : 2015年12月22日
- 本棚登録日 : 2015年12月22日
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