自民党の代議士、野中広務の評伝。存命の人物に関する伝記を読むことはあまりないのですが、何かで紹介されていて興味を持ったので読んでみました。
タイトルにある「差別」とはいわゆる部落差別のことで、氏が部落出身であるが故に受けた多くの辛く悔しい体験がその政治活動の原動力になっていたことを示している。数えきれないほどの修羅場をくぐった、まさに叩き上げの政治家だと言えるだろう。
しかし、読んでいて感じたのは(恐らく筆者の意図もそこにあるのだろうが)、彼のルーツと政治手法は別の問題だという点だ。彼が使った手法は要するに土建政治であり、金と酒と女で人を抱き込み、ライバルのスキャンダルを探しだして追い落とすといった権謀術数が描かれている。人間的には魅力的だったかも知れないが、政治面で共感できることはほぼ皆無だ。
彼が政界を引退することになった出来事は、そういう旧来の政治手法が通用しなくなったことを意味していると解釈できるだろう。もし実際にそういう時代変化があったなら歓迎すべきことだが、本当に変化があったかどうか、まだわからない。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年6月18日
- 読了日 : 2010年5月15日
- 本棚登録日 : 2017年6月18日
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