ネットで実際に(実際に?)目撃した事件が紙メディアで、要領よく、かつ望みうる限り公正にまとめられているのを見るのは、何となく安心するというかけりがついたというか、自分の中で納得がいってようやく終わった心地がする。当事者にとってはまだ全然そんなことはないだろうけれど。著者の事実関係を解きほぐしていく手腕は買うが、現象を抽象化したり分析的に考察するまでには至っていないようだ。取って付けたようにインターネットの功罪を云々するエピローグはいただけない。巻末の、堀部政男という人の解説はもっといただけない。この事件はインターネットの特質や危険性への警鐘、利用者のモラルのへったくれのというのが本質ではなくて、というかその辺は単なるおまけというか新味のあるスパイスに過ぎなくて、人はいかに自分の立場に依存し、自分の都合のいいほうにいいほうに考え、早のみこみをし、嫌なことは後回しにし、その結果コミュニケーションが阻害されていくかという昔ながらの普遍的なお話ではないのか。つーか、インターネットの功罪を云々するまとめに持っていくなら、著者は、舞台がインターネットに移ってからの周辺の動きなどもう少し詳細を書き込むべきであった。ひょっとしたら事件をリアルタイムでは目撃してないのか?
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ノンフィクション・ルポルタージュ
- 感想投稿日 : 2004年12月29日
- 本棚登録日 : 2004年12月29日
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