人口減少社会という希望――コミュニティ経済の生成と地球倫理 (朝日選書)

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  • 朝日新聞出版 (2013年4月10日発売)
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人口減少社会を、旧来とは視点を変え、長期的な視点でみたときのより豊かな様相への変化として描いている。

人口減少社会をポスト産業化時代としての定常型社会として位置づける視点が新鮮だ。20世紀の拡大・成長・上昇を核とする世界感は、富国強兵的世界感や経済成長という信仰という強迫観念に起因するものとする。

同時に、物質的生産の量的拡大が時間的発展の物語であるのに対し、内的文化的な発展を求めることが空間的な発展へと展開することを指摘する。

コミュニティ経済の特質として記述される下記の4点も、時代の変曲点を指標化する上で有効な分析といえる。
 ①経済の地域的循環
 ②生産コミュニティと生活コミュニティの再統合
 ③経済の持つコミュニティ的相互扶助性の再評価
 ④有限性の中での生産性概念の再定義

後半では、現在までの科学史を、「科学革命」、「科学の制度化」、「経済成長のための科学」とした上で、対象の相互作用、個別性・一回性の重視など、関係性の科学の視点が重要となることも指摘している。

20世紀から21世紀の変化の様相を分析的・総合的に描き出す好著といえるだろう。

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感想投稿日 : 2014年1月26日
読了日 : 2014年1月3日
本棚登録日 : 2014年1月3日

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