ファスト&スロー (下)

  • 早川書房 (2012年11月22日発売)
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5

下巻の抜粋です。紹介しきれない・・・

エキスパートの直感は信用できるか
「状況が手がかりを与える。この手がかりをもとに、専門家は記憶に蓄積されていた情報を呼び出す。そして情報が答を与えてくれるのだ。直感とは、認識以上でもなければ以下でもない」
・十分に予見可能な規則性を備えた環境であること。 
・長期間にわたる訓練を通じてそうした規則性を学ぶ機会があること。
1万時間の法則も出てきているが上の2点をクリヤーした直感は信頼性が高い。

楽観バイアス
 アメリカでは、スタートアップが五年生き延びる確率は約三五%である。だが自ら起業した人は、この統計が自分に当てはまるとは思っていない。ある調査によると、アメリカ人起業家は事業の継続性を期待する傾向が強く、「自社と同じような企業」が成功する確率を六〇%と見込む。これは実際の数字の倍に近い。そしてこれが自社のことになると、バイアスは一段と顕著になる。起業家の八一%は、自社の成功率を七〇%以上と見積もり、かつ三三%が失敗の確率はゼロだと豪語した。
ただ楽観主義はイノベーションの原動力でも有る。成功の秘訣は楽観主義だとしても、死屍累々の道のりなのだ。
組織であればある程度は楽観の行き過ぎを制御できる。
「いまが一年後だと想像してください。私たちは、さきほど決めた計画を実行しました。すると大失敗に終わりました。どんなふうに失敗したのか、五~一〇分でその経過を簡単にまとめてください」と言うのが死亡前死因分析。

ここまでが第3部、第4部はフレーミングの効果が色々示されている。

結果の効用の誤り
アンソニーは一〇〇万ダカット持っています。  
ベティは四〇〇万ダカット持っています。 
いま、二人には次の二つの選択肢が提示されました。  
ギャンブルを選べば、五分五分の確率で、あなたの財産は一〇〇万ダカットか四〇〇万ダカットのどちらかになります。

プロスペクト理論
問題1 あなたはどちらを選びますか? 
確実に九〇〇ドルもらえる。  
または九〇%の確率で一〇〇〇ドルもらえる。
問題2 あなたはどちらを選びますか?  
確実に九〇〇ドル失う。  
または九〇%の確率で一〇〇〇ドル失う。
問題3 あなたは現在の富に上乗せして一〇〇〇ドルもらったうえで、次のどちらかを選ぶように言われました。     
五〇%の確率で一〇〇〇ドルもらう、または確実に五〇〇ドルもらう。
問題4 あなたは現在の富に上乗せして二〇〇〇ドルもらったうえで、次のどちらかを選ぶように言われました。     
五〇%の確率で一〇〇〇ドル失う、または確実に五〇〇ドル失う。
問題3と4は選択の前後の状態は同じだが、最初にもらえる額が参照点として折り込まれるので損得に関わる感情が選択に影響する。

損失回避は、二つの動機の相対的な強さを表すと言うこともできる。すなわち、利得を手に入れようという動機よりも、損失を避けようとする動機のほうが強いのである。このとき損得の参照点は現状であることが多いが、ときには将来の目標が参照点になることもある。

A 六一%の確率で五二万ドルもらえる、または、六三%の確率で五〇万ドルもらえる。 
B 九八%の確率で五二万ドルもらえる、または、一〇〇%の確率で五〇万ドルもらえる。
期待値はどちらも先の選択が高いが、問題Bは確実にもらえる事から多くの人が100%を選ぶ。ノーベル賞経済学者も同じだった。ー
また、多くの人が得をする場面ではリスク回避的に、損をする場面ではリスク追求的になることが知られている。

サンクコストの呪縛(元の題は錯誤だが、呪縛の方が感じが出る)
ある会社があるプロジェクトにすでに五〇〇〇万ドル注ぎ込んでいるとしよう。このプロジェクトは計画通りに進んでおらず、最終的なリターンも当初予想されたほどには大きくないことがわかってきた。このプロジェクトを進行させるには、あと六〇〇〇万ドルの追加投資が必要である。しかしその一方で、その六〇〇〇万ドルを新規プロジェクトに投じるという案もある。こちらのほうが予想リターンははるかに大きい。さあ、この会社はどうするべきか。

第5部は幸福感や苦痛、快感について。いずれも絶対値ではなく前後の比較を重視してしまう。

私たちは、苦痛にしろ快楽にしろ、その持続時間についてはちゃんと好き嫌いがある。つまり、苦痛は短いほどよいし、快楽は長いほどよい。だがシステム1の機能の一つである私たちの記憶は、苦痛または快楽が最も強い瞬間(ピーク時)と終了時の感覚とで経験を代表させるように進化してきた。また、持続時間を無視するため、快楽を長く苦痛を短くしたいという好みを満足させることはできない。

幸福度調査で最もよく訊ねる質問「しあわせはお金で買えると思いますか?」に対して、驚くほど明確な答を得ることができた。それは、こうだ。貧しければみじめであるし、裕福であれば生活満足度は高まる。だが裕福だからといって(平均的にみて)より多くの幸福感が得られるわけではない、ということである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2013年4月4日
読了日 : 2013年3月26日
本棚登録日 : 2013年3月26日

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