リフレはヤバい (ディスカヴァー携書)

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン (2013年1月31日発売)
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感想 : 79
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リフレがヤバいことは感覚的に理解できる。アベノミクスも持続的な成長路線に乗せられなかったし、日銀のインフレ目標も事実上棚上げだ。インフレ状態にする唯一現実的なシナリオが円安とのことだが、為替相場は金融市場と米国の意向で決まるので実質的に日銀が操作できないこと、これ以外に人為的にインフレを起こすにはヘリコプターマネー以外に手段がないこと、仮にそれらの結果としてインフレになったとしても国民にとって何の利益もないことは良くわかった。マクロとミクロのバランスが取れていて非常に説得力がある。
ただいくつか理解できない点がある。
まず国債の暴落は円安が起点になるとのことだが、リフレで継続的に円安に誘導することはできないのではなかったか?そもそも日本国債の保有者は国内の機関投資家なのに為替変動で投げ売りが起こるのか?そんなことよりも財政破綻の方がずっと暴落のリスクが高いだろう。
また国債の暴落=長期金利の上昇が起こる場合、それはインフレ状態と同義ではないのか?物価が全く上がらず金利だけ上がることはありうるのか?一方でインフレは起こせないと言い、他方でインフレの懸念を主張しているように見える。
最後に円安で日本が滅ぶと言うのは極論を前提としていてナンセンスだ。もちろん制御不能な状態でどこまでも円が落ちていけばそうなるが、円が実力以上に過大評価されるのは国際競争力上明らかにマイナスだ。海外の企業を買いまくってグローバル経営を目指すのは結構なことだが、それは日本人の雇用を奪い、国内投資を縮小させる。いくら職業専門校を作ろうが、卒業生を雇う経営者は国内にはいなくなる。この辺りの認識が著者は甘いと言わざるを得ない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経済経営
感想投稿日 : 2016年11月13日
読了日 : 2016年11月13日
本棚登録日 : 2016年10月26日

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