又吉の「東京百景」を読んだ人は読み始めからオチが分かっていたことでしょう。
私もそうです。だけど読む手を止められなかった。
だって私は東京百景収録の「池尻大橋の小さな部屋」が好きすぎて、この話をもっと長く、もっと細かく書いてほしいと思っていたから。泣いたもの。あの数ページで泣いたんだもの。
しかし忘れちゃいけない。この「劇場」という作品はあのエッセイとは別物なのです。主人公ほんとクズだし。売れないし。まぁこれで売れたら「火花」とあらすじ似ちゃうもんね。売れない人が売れる話、っていう。簡単に言ったらそうなっちゃうから。売れなくてよかったんだけど。
あと主人公はほんとにクズなんだけど、このクズさってたぶん誰にでもあって。
好きなことやってても勝手に義務感とか、仕事感とか。そういうの出てきてなんもやりたくなくて一日中否定的な感情を持ち続けて終わるとか。あるじゃん誰でも。たぶんあるんだよ。
だからそういうのがまた、うん。つらかったな。
恋愛だけじゃないんだよなこの小説のテーマは。もちろん大きなテーマは恋愛なんだろうけど。恋愛だって人間関係だから。甘えて甘えて。ダメになるよそりゃ。
池尻大橋のときもそうだったけど、やっぱり最後が好きだ。「あれをしようこれをしよう」って考えるとこ。あそこに全てが詰まってる気がする。希望だとかだらしなさだとか、本当に好きだった気持ちとか。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年7月11日
- 読了日 : 2017年7月11日
- 本棚登録日 : 2017年7月11日
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