ショッピングモールはこんなものじゃないでしょ―某SC勤務 36歳女:談― 私にとってあまりにも身近すぎる環境が舞台なのでついつい手にしてみましたが、結局その舞台設定はあくまで添え物でしかなく、メインは男女の恋愛。しかもかなり狭い人間関係。せっかく不特定多数の人々が入り乱れる場所なのだから、もう少し人と人のつながりに広がりが欲しいと思ったり、働いているシーンがほとんどなく「ショッピングモールあるある」的要素も全く無いので個人的には消化不良。その点を除けば、可もなく不可もなくで特に印象に残らない小説でした。
ただ、私もこれまでの選択次第ではこの作品の世界のような日常もありえたのかな? などとifを想像してしまい、その点ではなんだかんだ不満を抱えつつも楽しめたとは思います。

2013年7月28日

読書状況 読み終わった [2013年7月28日]
カテゴリ 文庫

後世の記述ではなく、本人を含め当時、同時代を生きた人の日記から藤原道長の人物像を浮かび上がらせる趣旨なのでしょうが、いかんせん枚数が足りず終始駆け足気味に見え、その全てを伝え切れていないのが残念なところです。それだけ、簡単には語りきれないほどの多面性を持つ人だったという事なのでしょう。面白おかしく紹介しようという娯楽性はほぼ皆無の内容です。しかしさすがは現代人から見れば特異な平安貴族のその中でも特別な存在だった藤原道長。やはり一人の人間だったのはわかりますが、身近さをあまり感じないのは面白いところです。

2013年7月15日

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カテゴリ 奈良・平安もの

消防法を理解する必要に迫られたわけでもなく、また、予備知識も大した興味すら持ち合わせていない状態で読んだのですが、それでも特にひっかかる箇所もなく読み通せたので、史上最強かどうかはともかく、タイトルどおりわかりやすい部類の本なのでしょう。おかげで普段よく行く建物を違った目線で見ることができるようになりました。消防法関連の資格取得を目指すのならば、副読本として役に立ちそうな気がします。ただ、各章ごとにまとめがあればもっと良かったかなと思います。

2013年7月13日

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カテゴリ その他

今ならこの物語の題材となっている貴婦人と一角獣のタピスリーを日本で鑑賞できる(2013年10月まで)ので、現物を肌で感じてから読むのが一番ではないでしょうか。肝心の内容ですが、一角獣から連想してしまう幻想的なロマンスを期待すると、間違いなく肩透かしを食います。出てくる人物はみな、ユニコーンがいたら蹴飛ばされるか角を刺されるような人たちばかり。しかし貴婦人と一角獣の製作に携わった人々の視点で物語が綴られていく様はまさにタピスリー。架空のお話ですが、実際にこんな感じだったのかな。と思わせる説得力があります。

2013年6月30日

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カテゴリ その他

井上靖作品を読むのは「額田女王」以来2作目ですが、時の権力者に愛された女性を描いた作品という点では同様でありながら、この楊貴妃伝はかなり趣の違う作品だと感じました。解説でも触れられていますが、心理描写が少なく、淡白すぎるくらいに淡々と話が進められていきます。一見欠点のようですが、これがフィクションでありながら歴史を見るかのような感覚にする効果を生んでいると思います。さらに比較すると、額田女王は自分の役目に誇りを持った女性の物語で、楊貴妃伝は自分に与えられた役割に覚悟を決めた女性の物語。という気がします。

2013年6月24日

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カテゴリ 文庫

日本のオペラ草創期、国際的なプリマドンナとして活躍した三浦環の生涯を描いた作品ですが、この小説を読む限りではなかなか魅力を感じることはできません。裕福な家に生まれ歌の才能があり、嫉妬や誤解を受けすれ違いもありましたが、恋人(夫)をとっかえひっかえしつつ世界で認められ最後まで大好きな歌を歌い続けて一生を終えました。という、大きな挫折もなくかなり羨ましい恵まれた人生に思えます。だからこそ逆に、実際の彼女はどうだったのかという興味が沸き、小説以外の三浦環に触れてみたくなる。そんな不思議な感触の本でした。

2013年6月23日

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カテゴリ 文庫

よくわかったのは、私の中でいまだに3月11日から時間が止まっている、というか、自分で止めている部分があるという事でした。実際にあの災害を体験したわけでもないのに。せいぜい遠く離れた東京でちょっと大きな揺れに恐怖して、埼玉の避難所でボランティアに参加して善い事したつもりになって、親戚のある大船渡で見た景色に打ちのめされた程度。それなのに、引き摺っている。物語はとても好みで感動もしたけど、同時に震災をダシに商売するなんて。という怒りもあり複雑な心境です。私が読むには、まだ少し時期が早かったかもしれません。

2013年6月15日

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カテゴリ その他

父が松井秀喜ミュージアムに行ってきたお土産でもらった本書。どうせインタビューを元にゴーストライターが書いたんでしょ?(当時は)現役のメジャーリーガーが文章を書いてる時間なんてそうそうあるものでもなし。中身も「いかにして私は名門球団で成功をおさめたか」みたいなサラリーマン向け成功談だろうな。と思って読み始めたのですが、どっこいこれがヤンキース退団直後の時期で骨折や膝の怪我での苦労話と他者へのリスペクトが3:7くらいの内容。あらゆる他者への尊敬と感謝が綴られていて、この姿勢は実にさわやかで心地よい感触です。

2013年6月15日

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カテゴリ 新書

最大の特徴はカラー図版で当時の絵画が豊富に載せられている事です。読ませる本というよりはビジュアルブックという面が強いかと。文字が全然無いわけでもないのですが、むしろ文章はオマケと割り切り、ただ眺めて楽しんでも良いでしょう。ヴェルサイユ宮殿がどのような意味を持つ場所だったのか。という雰囲気はつかめると思いますが、では建築物としてはどうなのか。という点では具体的なデータがあまり示されていないのでぼやけた感じがするのは否めません。同じテーマの違う本と併せて読む事で満足度が変わってくる本ではないでしょうか。

2013年6月10日

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カテゴリ その他

冷静に考えるとこれは小松左京でなくとも書ける話では? という気もあります。大雑把にいえば異端と常識との対立の物語ですから。しかし世界(社会)は壊すけどヒトは残すというやり口で読後も想像して楽しむ余地を多く残してくれるあたりはこの作家さんならではという気もします。そしてやはり50年ほど前の作品とは到底思えない衝撃も強く、特に失業が罪とされ失業者は社会から切り捨てられる冒頭は現実味を強く感じ惹き込まれます。会話の大半が大阪弁なので「じゃりン子チエ」のようなほのぼの感がありますが、かなりシリアスなお話でした。

2013年6月10日

読書状況 読み終わった [2013年6月10日]
カテゴリ 文庫

黒船来航と聞くと『泰平の眠りをさます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず』という狂歌などから、幕府には寝耳に水でアメリカが大砲突きつけホールドアップを迫り、それに怯えて相手の言いなり。というイメージを持たれがちですが、鎖国(これも海禁と言う方が的確でしょう)政策の中、幕府は事前に可能な限り情報を収集・分析し対策を練り、外交の経験がほぼ無いながらも立派に交渉をやり遂げています。日米双方の史料を採用しているので、当時まだ新興国だったアメリカの思惑とハッタリも見えて日本史のちょっとした誤解を解いてくれる良い本です。

2013年6月8日

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カテゴリ 講談社学術文庫

この日にこの場所でこういう人が参加し、どんな式次第だったのか。というのはわかるのだけれど、御所の図面やどんな格好をしていたのかなどがないので、詳細なわりには今ひとつイメージしきれないところがあります。古代の朝廷で行われた年中行事のシステム面を重視している内容なので、風習としてはあまり見えてこないとは思います。あと、全ての行事を扱っているわけでもないのでそこは注意が必要かもしれません。私としては相撲節について知りたかったので概ね満足はしています。今後の研究を待ち、シリーズ化していただけたら幸いです。

2013年6月4日

読書状況 読み終わった [2013年6月4日]
カテゴリ 講談社学術文庫

これまで女性同士の組み合わせ、いわゆる「百合」要素の強い作品にはいくつか触れてきましたが、表紙からしてそれとわかる露骨(?)な百合小説は初めてなので、少し不安にも似た何かが読む前にはありました。しかしそこは宮木あや子。ただ女の子が女の子を好きになってキャッキャウフフなお話ではなく、LGBTを描いた作品となっています。そういう点では、これは百合小説ではない気がします。同じ宮木作品では「雨の塔」が近い雰囲気ですが感触は別物です。登場人物が前向きな信念や希望を持っていることが違いを生んでいるのだと私は思います。

2013年6月3日

読書状況 読み終わった [2013年6月3日]
カテゴリ その他

確かに、モーパッサンが師事したフローベールの「ボヴァリー夫人」に似たところが多いのですが、受ける印象は違います。私としては、文章にハードボイルド小説のようなドライさを感じました。劇的なドラマがあるわけではなく、主人公・ジャンヌも決して感情移入しやすい人物造型ではないのですが、でも人生ってこんなものだよね。と、共感や同意できるところも多いです。若い世代にはピンとこないかもしれない老成した物語ですが、これが著者が33歳の時の作品と知り驚き。モーパッサンは他人より倍の速さで生涯を送った人なのかもしれませんね。

2013年5月30日

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シャルル9世の生涯を描いた物語ではなく、その時代に翻弄された青年のお話。舞台となった16世紀当時のフランスを語る上で避けて通れないユグノーとカトリックの対立が物語の根底にあるのですが、無宗教の私からすれば異なる宗教ならまだしも、教派が違うだけで対立というのはアイドルグループのファン同士がどのメンバー推しかで揉めるのと大差ない気がして、それ故にサン・バルテミルの虐殺が一層愚かしく感じられます。やや物語の焦点がぼやけ気味の所はありますが、テーマは明確です。テンポが良いので旧字体に抵抗がなければ難なく読めます。

2013年5月28日

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カテゴリ 岩波文庫

草木や花、植物の名前がふんだんに登場する3篇の乙女たちの物語です。読み終えて思うのはやはり男性は女の人よりもうんと繊細でロマンチストなのだな。という事です。クララ・デレブーズ、アルマイード・デートルモン、ポム・ダニス、登場する3人の乙女が純潔すぎて、これはむしろ男性にしか描けないでしょう。無知であるがゆえの無垢さなどに、処女信仰というか汚れた欲望のない少女愛を感じます。女性が書くとどうしてもドロッとしたものがちらついてしまう世界ですが、そういうのがない綺麗なお話です。間に挟まれているイラストも素敵。

2013年5月19日

読書状況 読み終わった [2013年5月19日]
カテゴリ 岩波文庫

朗読・吉永小百合。そんな想像を勝手にしてしまい、原文でも読んでみたいと思う上品で薫り高い文章でした。内容はフランス貴族のご婦人が嫁いだ娘さんにせっせと送り続けた書簡集なのですが、これが溺愛を感じる内容で微笑ましく、娘からしてみれば「わかったわかったお母ちゃん、もうええから」と言いたくなるほどの筆まめぶり。そんな風に思ったのは、私が母親ではなく娘の立場だからなのかもしれません。親の心、子知らずとはよくいったものです。期せずして母の日を間近に控えた時にこの本を読めたのはとてもよいめぐり合わせでした。

2013年5月10日

読書状況 読み終わった [2013年5月10日]
カテゴリ 岩波文庫

この作品、1714年にフランス国王ルイ15世の公妾だったポンパドゥール夫人がヴェルサイユ宮殿に設えた小劇場で自ら国王の前で演じたもののひとつだという記録が残っています。当時、幅を利かせていた聖職者を批判するような箇所も多いので、これを宮廷で演じるのはなかなか思い切った事をするな。と思っていましたが、ラストで納得。少しご都合主義なところがありますが、結局は「国王陛下万歳!」な部分があるんですね。国王を喜ばせようとする夫人の思いが感じられました。作品そのものに対してではありませんが、私としてはそんな感想です。

2013年5月8日

読書状況 読み終わった [2013年5月8日]
カテゴリ 岩波文庫

やや煽り気味のタイトルと帯のおかげであまり期待していなかったのですが、想像以上に興味を持って読むことができました。2部構成の第1部では愛人制度や後宮の仕組みが紹介されているのですが、ここが突っ込みすぎずに要点をおさえていて良いです。オスマン帝国のハレムもあり、イスラム世界に疎い私にとっては新鮮でした。ただ第2部の人物列伝はもう少し絞っても良かったかもしれません。出てくるのがほとんどフランス人なので。その分、かの国には傾国の美女がたくさんいたということなのでしょうね。それにしても、身を置きたくない世界です。

2013年5月6日

読書状況 読み終わった [2013年5月6日]
カテゴリ 新書

やはり歴史というものは、通して眺めるのが理解を深めるには一番の入口だと思っています。フランク王国から現在の第五共和制までをフォローするこの本は、そういった意味では満足です。が、200ページそこいらの分量でかなり駆け足になってしまっているのと権力争いや政治体制メインの内容なので、若干の物足りなさがあるのは否めません。それとヨーロッパの国々は特に国家ではなく地域で歴史を捉えないとわかりづらいところもありますので、ちょっとこの1冊だけでは消化不良かな。という気分です。放送大学やEテレの番組を見ている感覚ですね。

2013年5月5日

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カテゴリ 新書

他にも英語や韓国語などの言語もあり、単語帳、フレーズ集とあるシリーズのフランス語単語編。この本の最大の特徴であり、ウリなのが特殊な素材で製本されていて水濡れに強くお風呂で読めるという事。代償として思った以上に重たい。撥水加工の性質上、ペンで書き込みがし辛い。プラスチックに似た弾力のある紙質のためか、ページを思い切り開くと背表紙が割れてバラける可能性が高い事。などなど各種デメリットがあります。内容の面では、単語が冠詞とセットで紹介されている点でしょう。これ、地味なようですが結構ありがたいような気がします。

2013年4月29日

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カテゴリ その他

いざ祖国の子らよ、栄光の日は来たれり! 世界で1、2を争う勇ましい国歌のラ・マルセイエーズ。日本がこれと張り合うなら「宇宙戦艦ヤマト」あたりを用意するしかないでしょう。1792年のストラスブール。パーティーでのムチャ振りから一夜で生まれた「ライン軍のための軍歌」が遠く離れた南仏の港町マルセイユに伝播し革命のテーマ曲となり紆余曲折の後、国歌となる経緯はもちろん、作者ルジェ・ド・リールの人生にも数奇なドラマがあります。音楽家の著者ならではの音楽ネタも多く、これがまた面白くみどころたくさんで満足しました。

Qu'un sang impur Abreuve nos sillons!(汚れた血で我らの田畝を満たせ!)などなど、物騒だったりあからさまに他国を敵視している歌詞が平和の時代にそぐわないとして時おり論争の的になるラ・マルセイエーズですが、私としては変える必要はないと考えます。なぜならこの歌、国や為政者が用意したものではなく、民衆のなかから自発的に生まれてきたものなのですからね。これこそ「国民の歌」といえるのではないでしょうか。日本人の私が口を挟むことではないのですけれど。

2013年4月26日

読書状況 読み終わった [2013年4月26日]
カテゴリ 新書

微妙。けれど最近、フランスの古典文学に触れる機会が増えたのでやはり作品の舞台や書かれた当時の社会情勢の知識があった方が楽しめるかな? なにしろ世界史はサッパリなのでせめて王様くらいは知っておこう。という目的があったのでクロヴィス1世からルイ・ナポレオン(おまけでそれ以降の大統領)までを羅列する本書はとりあえず読んでおいて良かったかな? という感想です。ただ、全く知識のない人向けの本なのにアウストラシアとネウストリアを著者が勝手に日本になぞらえて「フランス南北朝」としてしまったのはかえって誤解を招くだけでは?

2013年4月25日

読書状況 読み終わった [2013年4月25日]
カテゴリ 新書

数多く読んではいませんが、それでもこの作品は私の知るフランス文学としてはかなり異質だと感じます。舞台がパリなどの都市部ではなく、山奥の集落。恋愛要素も人物の心理描写も皆無。中でも一番驚いたのはキリスト教の影響があまり見受けられないところで(何でも作者はキリスト教を宗教として信じていなかったそうな)、神(God)の存在が希薄なおかげで「人間も天然自然の一部でしかない」という物語のテーマが実に明瞭になっています。フランスというより日本の東北地方あたりがしっくりきそうな世界で、とても日本的に思える作品です。

2013年4月25日

読書状況 読み終わった [2013年4月25日]
カテゴリ 岩波文庫
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