城塞(下) (新潮文庫)

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あらゆる堀を埋められた大阪城での夏の陣。勝敗はすでに決し、その中で見どころはやはり真田幸村の活躍。華々しく死んで名を残すことだけを目指す武将がほとんどの大阪方の中で、彼だけは勝つことを決してあきらめない。綿密な作戦を練り、それがうまく行かなければ、次の策を練る。疲れることのない彼の精神と徳川方を蹴散らして突進する行動力は痛快だ。

こうした滅びに向かう美を描くことこそが司馬文学の真骨頂。そして、幸村の思考は戦闘のことだけではない。戦闘の合間に自身の娘を今日戦ったばかりの敵将、伊達政宗に託そうとする。そんな大胆な行為を見せる幸村に対して、それに応じる政宗。敵味方の関係を越えた2人の武将のやりとりは本巻の最高のエピソードだ。

幸村をはじめとする大阪方の武将たちの気迫に圧倒される徳川方。大阪の陣で徳川が勝てたのは、圧倒的な兵力差と家康の石橋を叩いて渡る知謀、そして淀殿を中心とする豊臣家の不甲斐なさが原因。

こうして燃え落ちる大阪城とともに、戦国時代は幕を閉じる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史モノ
感想投稿日 : 2017年12月13日
読了日 : 2017年12月13日
本棚登録日 : 2017年12月13日

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